JICA緒方研究所

出版物

ワーキングペーパー

No.143 Foreign Currency Borrowing and Risk-Hedging Behavior: Evidence from a Household Survey in Cambodia

外貨(ドル)建ての借り入れ、いわゆる金融ドル化と呼ばれる現象は途上国経済において広く見られる現象であるが、特にカンボジアでは、M2に対する銀行の外貨預金額の比率でみた場合に、2014年の時点で約83%となっており、ドル化が高度に進行している。本稿では、カンボジア中央銀行とJICA研究所の共同プロジェクトとして2014年に行われたカンボジアの2237戸の家計へのインタビュー調査で得られたデータを用いて、カンボジアの家計部門における外貨建て借入行動についての決定要因の分析を行った。

収集された個票データから家計の通貨別の金融活動について把握することが可能となっており、このデータを用いて家計の外貨借入行動に関する先行研究で提示されている資産選択理論による説明の妥当性について実証を行った。実証分析では、借入を行っている家計にサンプルを絞り、家計がドル借入を行っているかどうかの二値変数を被説明変数とし、プロビットモデルによる推定を行った。分析の結果、収入の通貨構成の中で外貨建ての比率が高くなるとより外貨建ての借り入れを選択する確率が高くなることが分かり、為替リスクに対するリスクヘッジ行動の結果として外貨建ての借り入れを選択しているとする資産選択理論に基づく仮説が支持される結果となった。また、自国通貨が将来減価すると予想する場合には、自国通貨建ての借り入れを行う傾向にあることも明らかになった。

さらに、本稿では為替リスクに対するリスクヘッジ行動の程度というのは世帯主の教育水準によって異なることも実証的に明らかにした。すなわち、教育水準の高い家計では収入と借入の通貨を一致させる行動がよりに強く見られたのに対し、教育水準の低い家計では収入ではなく支出の通貨と借入の通貨を一致させるよう行動していた。世帯主の教育水準が低いと為替リスクに対するリスクヘッジ行動をとらない傾向にあることが分かった。このことは、為替リスクに対するリスクヘッジ行動には、金融リテラシーが大きな働きをしている可能性を示している結果と考えられる。

ページの先頭へ