JICA緒方研究所

出版物

ワーキングペーパー

No.214 Monetary Policy Spillover Into a Developing Country When the US Federal Fund Rate Rises: Evidence on a Bank Lending Channel

開発途上国の銀行は外国からの資金に高く依存する傾向があり、そのような外部資金への依存は外国の金融政策の影響を受けやすくなるといった脆弱性を銀行セクターにもたらすことが考えられる。特に、海外の政策金利の増減は金融機関の資本コストの変化を通じて、金融機関の貸出行動に影響を与えることが考えられる。本稿では、2013年第一四半期から2019年第二四半期までの銀行の新規貸出とバランスシートのデータを用いて米国政策金利の変更やその他の外国の金融政策の変更のカンボジアの銀行貸出への波及効果を検証した。カンボジアは東南アジアでは最も発展が遅れている国の一つであり、金融セクターが高度にドル化し、資本移動の制約がない。このような環境は、海外の金融ショックが銀行の国内貸出を通じて、カンボジア経済に影響を及ぼしやすいと考えられる。

分析の結果、外国からの資金に依存している銀行ほど2015年第四四半期以降の米国金利の上昇に対し、貸出を減少させる傾向があることが示された。これは、米国の政策金利の上昇に応じて海外からの資本のコストが上昇したため、それに依存していた銀行が貸出を減らさざるを得なくなったためと考えられる。また、分析では、政策金利の上昇は新規貸出の配分にも影響を与えていたこともわかった。特に、米国金利上昇に対し、米国ドル建て貸出、消費者向け貸出、担保付貸出の割合が増える傾向にあることがわかった。これは、資本コストの上昇に対し、銀行がリスクのより低い貸出へと貸出行動を変えていたことを示す結果であると考えられる。以上の結果に関して、米国金利の変化に関しては様々な分析モデルで頑健な結果が得られたが、銀行の主要な株主の母国の金融政策に関しては頑健な結果が得られなかった。つまり、カンボジアのような高度にドル化した開発途上国では、米国政策金利の動向が国内のマクロ経済の安定性に影響を与える重要なファクターであることが示唆される結果であった。


キーワード: 銀行貸出チャネル、国際的な金融政策効果の波及、資本流入、開発途上国、ドル化、カンボジア

ページの先頭へ