比較国際教育学会年次会合(於カナダ)で東アジア高等教育について最新の研究結果を発表

2011.05.25

結城貴子研究員と黒田一雄客員研究員(早稲田大学教授)が率いるチームは2008年10月より、東アジア高等教育に関する大規模な調査を実施してきました。本研究では、高等教育国際交流の傾向と効果、およびそれら国際交流が高等教育制度の地域統合に与える影響を分析しています。プロジェクトも終盤を迎え、研究成果を教育専門家だけでなく、各国政府、国際機関、開発機関の関係者など、多くの人々へ発信するため、積極的な活動を続けています。[バンコクワークショップの記事へ] この広報活動の一環として、今般、カナダのモントリオールで開催された比較国際教育学会(CIES:Comparative and International Education Society)の年次会合で研究発表を行いました。

CIES会合は、教育実務の研究により異文化間の相互理解や学問研究を推進することを目的とし、年一回、米国の非営利団体によって開催されています。毎年、教育専門家や国際機関の職員など世界中から約1,300人が集まるこの会議は、途上国の教育問題をも扱う最大規模の国際学会です。今年は2011年5月1日~5日、およそ600のプログラムが幅広いテーマにわたり設けられ(結城研究員の言によれば、その多様さはまるで研究のショッピングモールのようであった、とのこと)、研究者がそれぞれ意見を交換したり、教育界の最新動向について情報共有を行ったりしました。

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黒田一雄 客員研究員

JICA研究所チームは5月2日、4日に開催された高等教育に関する二つの分科会でプレゼンテーションを行い、どちらも好評を得ました。最初のセッションでは、東アジアの主要大学300校で実施した調査の分析結果を紹介しました。調査対象の大学が国際交流プログラムでパートナーとなる地域に対し、どのような意識を持っているかという点について報告。発表の中で結城研究員と黒田研究員は、東アジア高等教育のフレームワーク形成にはなんらかの北米との連携枠組みが必要である、と主張しました。現在研究チームは、学術誌への掲載を目指してワーキングペーパーを推敲中です。[ワーキングペーパー参照]

「高等教育の連携」が議題となった二つ目のセッションでは、先に挙げた大学で実施している国際共同学位プログラムの分析結果を発表しました。プログラムの「期待される成果」や「課題リスク」を中心とした説明に対し、欧米や中国の大学で実施されている同様の学位プログラムを調査している研究者から、コメントや質問が寄せられました。

黒田研究員は「初等教育がより高い関心を集める一方で、学会のセッション数に反映されているとおり、高等教育に関する研究も増加している。我々が参加した両分科会にも高等教育研究に熱心な多くの関係者が集まっていた。」と述べています。結城研究員によると、会議では他にアジア開発銀行による高等教育の分科会や、他の研究チームによる欧米地域の調査報告などもあったとのことです。

本研究では複数のワーキングペーパー発表を予定しています。結城研究員らは現在、会議で寄せられたフィードバックや指摘をもとに執筆中の論文に修正を加え、次のワーキングペーパー発刊に向けて準備を進めています。

関連研究領域:援助戦略

関連研究プロジェクト:東アジアの地域統合、労働市場と人的資本形成

開催情報

開催日時:2011年5月2日(月)~2011年5月4日(水)
開催場所:カナダ モントリオール

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