No.39 Cross-Border Collaborative Degree Programs in East Asia:Expectations and Challenges
「東アジアにおける国際共同学位プログラム:期待される効果と課題」
本論文では、学生の移動のみを伴う従来型の留学のみならずプログラムの移動など多様な形態で展開しつつある、東アジアにおいて国境を越えて提供される高等教育について考察する。東アジアの指導的大学およびその国際共同学位プログラムに対する質問紙調査の結果を用い、共同活動の度合いの違いに焦点を充てて、国際共同学位プログラムに期待される効果と、リスクや課題を考察する。期待される効果について、大学に対する質問紙調査では、単に学生の移動を伴う従来型の留学よりも、共同学位プログラムにおいて「教育の質の向上」の重要性がより高い傾向が示唆された。しかし、国際共同学位プログラムに対する質問紙調査では、学習の場、カリキュラム、学位授与の面で、多様な共同プログラム内で共同活動の度合いが異なることも明らかになった。一方に運営の主体が偏ったプログラムよりも、双方の大学がより運営に参加する協働性の高いプログラムにおいて、「異文化理解の促進」「研究の質・水準の向上」「地域協力の促進とアジアンアイデンティティーの確立」の重要性がより高い傾向が示された。分析の対象として低所得国のプログラムを除外し、高所得国と中所得国の機関間で行われているプログラムに限定した場合には、協働性の高いプログラムへの期待は、「グローバル経済の需要へ合致すること」などの経済的効果にも期待が大きいことも認められた。また、協働性の低いものと比較して協働性の高いプログラムでは、国際共同学位プログラムのリスクと課題が低く認識される傾向がある。これらの結果は、国際共同学位プログラム内で相手機関の期待に応えるため、そしてリスクや課題を軽減するためには、両機関による高い参加度が重要であることを示している。特に、パートナーシップを組んだ各国が経済および高等教育機関を発展させる上で、協働性の高い活動展開を考察する価値があるだろう。
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