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豊田知世RA、地理空間学会・JICA共催公開シンポジウムで発表

2011.10.12

豊田知世リサーチ・アソシエイト(RA)は10月1日、東京・市谷のJICA研究所で開かれた地理空間学会・JICA共催公開シンポジウム(地理空間学会第11回例会「アジアの大都市の100年:都市発展と環境変化」)で、「アジア大都市における地下環境変化のステージモデル」のテーマで発表しました。

豊田RAはかねてから、東京、大阪、ソウル、台北、バンコク、ジャカルタ、マニラのアジア7都市を対象に、長期にわたる社会経済の発展によって、地盤沈下や地下熱、重金属汚染がどう変化するのかといった環境問題に着目してきました。「DPSIR(Driving forces=機動力、Pressure=圧力、State=状態、Impacts=影響、Responses=対応)フレームワーク」を使って、1900~2005年の約100年間に、それぞれの都市の発展に付随してどのような環境問題が起きているのかを分析し、その結果を今回発表しました。

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豊田知世RA

地盤沈下を例にとると、DPSIRの手法では、Dは人口や所得水準、産業構造、Pは地下水揚水量や水消費量、Sは地下水位、Iは地盤沈下、Rは地盤沈下対策といった指標を用います。これらの指標を用いて、それぞれの指標が都市の発展によってどう変化したのかを調べることで、社会経済の発展と地盤沈下に対する影響を統合的に把握します。次に100年間の都市の発展段階ごとの特徴を整理し、地盤沈下の場合、「都市化初期」「工業化」「地盤沈下認識」「対策」「問題解決」の5段階に分けました。地盤沈下が深刻化したのは「工業化」が進展した時期であり、大量の地下水がくみ上げられた結果、各地で深刻な地盤沈下が発生しています。

「問題解決」の段階に達しているのは東京、大阪、台北の3都市のみで、他の都市は、対策がとられているが問題解決に至っていなかったり(バンコク)、認識されているにもかかわらず有効な対策がとられていなかったり(ジャカルタ、マニラ)というのが実態です。また、都市間を比較することで、ジャカルタとマニラは、人口や経済規模が大きく、急速に拡大する都市で地下水が大量にくみ上げられているため深刻な地盤沈下が発生していること、台北とバンコクは地下水の流入量が大きいため、比較的早く地下水位が回復していることなど、各都市の発展パターンと特徴が明らかとなりました。

豊田RAは「今後はアジアを中心とした途上国の都市人口が急速に増加する。これまでの都市の発展する過程から得た教訓を参考に、環境対策を講じることが重要。とりわけ環境問題は複合的な問題であるため、正確なモニタリングはもちろん、モニタリングデータや統計データなどの指標を統合し、開発と環境問題との因果関係を明らかにする視点が欠かせない」と発表を締めくくりました。

開催情報

開催日時:2011年10月1日(土)
開催場所:JICA研究所

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