アジア低所得国の持続的開発をテーマにJICA・IMFが合同国際会議を開催

2011.10.27

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10月12日、JICAと国際通貨基金(IMF)は「アジア低所得国の持続的開発:インフラ投資と金融セクター開発」と題した国際会議を開催しました。アジアの低所得国が直面する問題を議論し、持続的開発の方策を探ることを目的として開かれた本会議には、15か国の政策立案者、研究者、開発援助機関職員など、約100名の参加者が集まりました。

冒頭の挨拶で緒方貞子JICA理事長は、インフラ投資と金融セクター開発は低所得国の人々の生活水準向上に大きく貢献できると強調し、JICAの業務の中でも重要分野として位置づけられていると語りました。

会議では、①新興国市場から得たインフラ投資に関するマクロ経済的教訓、②アジア低所得国でインフラ開発を進める上での政策的配慮、③低所得国が抱える金融セクターの政策的課題、という3つのテーマについて議論がおこなわれました。各テーマに関する討論には、アヌープ・シンIMFアジア太平洋局長、ラジャット・ナグ・アジア開発銀行事務総長、アジア国々の政府高官など、多様な発表者・コメンテーターが参加しました。

JICA研究所の藤田安男上席研究員は、自身の研究、及び最近のJICA調査の成果を基に、第2のテーマについて発表しました。藤田研究員は、アジアの低所得国は大規模なインフラ投資を必要とする一方で、財政的制約や政府のキャパシティ不足という問題を抱えているため、インフラ不足の効果的縮小のためには投資の優先順位づけが不可欠であると主張しました。また、集積経済や生産工程細分化、大規模市場への好アクセスなどの恩恵を享受するためには、地域や場所の連結性を向上させるインフラ(運輸・通信・電力等)が重要であるとして、これらインフラ整備は優先事項の一つだと訴えました。

さらに同研究員は、インフラは経済活動やエネルギー消費、そして人々の生活様式と密接に結びついており、その整備にあたっては気候変動による変化にも留意する必要があると指摘しました。

また2005年以降増加傾向にあるアジア低所得国の民間インフラ投資の更なる拡大へ向け、各国政府は民間セクター参加がインフラのどのような面で改善効果をもつのかを把握し、投資環境等の整備に継続的に取り組むとともに、官民両セクターの役割を明確にした上で、採算性がありかつ適切に計画されたインフラ事業を推進することが求められると述べました。

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総括セッションに参加する藤田安男上席研究員(右)

最後の政策ラウンドテーブルでアジア全体のインクルーシブな成長や、教育・健康などのソフト・インフラ拡充の必要性という政策議題について意見交換がおこなわれた後、小寺清JICA理事の挨拶でセミナーは閉会しました。

藤田研究員によると、今回の会議のように「アジアの低所得国」が取り上げられる例は稀であるとのことです。アジアの開発途上国の議論は中国やインドネシアといった国々に関するものが中心で、また、低所得国というとアフリカ諸国を対象にしていることが多く、これまでアジアの低所得国が注目を集めることは少なかった、と同研究員は言います。また、「今回はIMFとJICAが共催した初めての会議であり、今後、アジアの低所得国のみならず、他の地域の開発における両機関の連携がさらに強化されることが期待される。」と藤田研究員は話しています。

本会議の議論の結果は、韓国で予定されているハイレベル会合など開発援助に関する今後の政策協議において反映されることが期待されます。

開催情報

開催日時:2011年10月12日(水)
開催場所:JICA研究所

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