JICAとKOICA、相互学習の場となる共同ワークショップを開催:効果的な開発協力をもたらすには

2012.03.02

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加藤宏副所長

JICAと韓国国際協力団(KOICA)は、共同で研修プログラムや研究プロジェクトを行うなど、これまで様々なかたちで協力関係を築いています。* その一環として、2012年2月16日、両機関は「釜山HLFを踏まえた効果的な開発協力」というテーマで相互学習を目的としたワークショップをソウルで開催し、ODA従事者、研究者、学生を含む100名以上が参加しました。

第1回目となる今回のワークショップは、両者が開発の最新のテーマを分析し、互いに学び合う機会となりました。KOICAからはSungmog Hong副総裁、You-ah Chung 調査研究室長およびその他職員が参加、日本からは、JICA研究所加藤宏副所長、山田浩司参事役、本田俊一郎リサーチ・アソシエイト(RA)、またJICAから國武大紀国際援助協調課主任調査役が出席しました。

様々なテーマのなかから、研究と実践の連携、官民連携パートナーシップ(PPP)、プログラム型援助アプローチ(PBAs:ドナーや他の関係者間で援助協調をはかって、被援助国主体の国家開発計画を支援することが重要とする考え方)という3つの課題について、JICAとKOICAからそれぞれ発表を行いました。PPPとPBAsは、昨年12月に行われた釜山ハイレベル会合で議題にあがった援助効果の重要テーマから、両機構が協議の上今回の議題に決定しました。

最初のセッション「新たな知見を事業実施につなげる」では、加藤副所長がJICA研究所の成り立ちとその業務について述べ、国際開発や日本のODAについて客観的な分析・研究を追求し、その成果を世界に発信していく役割を担っていると語りました。さらにJICA研究所が、研究と実践の相乗効果を生むために、学術研究者と開発実務者の共同研究を進めている旨を説明した後、開発専門のシンクタンクが存在しない日本において、JICA研究所が実践的な経験に基づいた開発研究を推進する機能を果たしていると論じました。

次のセッションでは、JICAの國武主任調査役が援助効果の議論の経緯、及び日本の援助協調の取り組みについて紹介し、JICAは南南協力・三角協力の豊富な経験があり、釜山ハイレベル会合ではこの課題に関する議論で大いに貢献したと話しました。また、開発現場で見られる援助協調のパターンに触れ、そのなかでのJICAの姿勢を強調し、開発潮流のパラダイムシフトの原動力として注目されている開発効果を促すPBAsの重要性を論じて発表を締めくくりました。

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本田俊一郎リサーチ・アソシエイト(左)

次に、本田RAがタンザニアでのPBAsに関する経験について述べました。この開発協力のアプローチは、被援助国主体の開発戦略や計画を、様々な開発関係者が協調してサポートするという考えに基づいており、昨今、開発効果を向上させる1つの主要なアプローチとして世界的に浸透してきています。

本田RAは、JICAが2000年初頭から取り組んでいるタンザニアでのPBAs(日本のODA内で最初期のPBAs活動の1つ)の様々な取組について説明し、被援助国の政策や戦略の枠組みの改善や、困難な構造改革に関する課題を関係者が協調して取り組むことができることなどがPBAsの利点であると論じました。また、PBAsに積極的に参加することにより、JICAはプロジェクト等を通じて得られた協力成果を全国に拡大展開することができたと強調しました。

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山田浩司参事役

3つ目のセッションはPPPをテーマとし、JICA研究所の山田参事役がJICAインド事務所次長として駐在していた際に関わった、同国でのJICAの民間セクター・パートナシップ・プログラムについて紹介しました。山田参事役は、NGOや市民社会組織とのPPPの詳細や支援について簡単に説明した後、NGOや民間企業との取り組みについて述べ、なかでも、同事務所がインドと日本企業の連携促進のため仲介役を務めたオーガニックコットンの生産支援プロジェクト「ハコ・ピース・バイ・ピース・コットン・プロジェクト」について詳しく話しました。また、山田参事役は、PPPやNGOとの協力における開発機関の理想的な役割は、各関係者間の相互学習や情報共有を助ける触媒であると強調しました。

最後に閉会の辞で加藤副所長は、このワークショップが互いの経験を共有する実りの多い機会となったと語り、今後も相互学習を継続し、さらに世界へ向け共通のメッセージの発信に繋げていきたいと述べました。

*共同研究の成果の一例として、書籍『Catalyzing Development』(ブルッキングス研究所出版 2011)があります。

開催情報

開催日時:2012年2月16日(木)
開催場所:韓国、ソウル

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