JICA研究所所長、世界銀行セミナーで発表

2012.07.10

6月22日細野昭雄JICA研究所所長は、ワシントンD.C.の世界銀行本部で開催されたセミナーで、ブラジル・セラード農業開発について発表を行いました。

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細野昭雄所長(セミナーの様子)

このイベントは、世界銀行農業開発グループ、日本理事室、ブラジル理事室の共催で実施され、世銀内の農村開発実務者を始め、アメリア・サンバーナ在米モザンビーク大使ほか政府関係者が出席しました。

世界銀行内部では、ブラジル・セラードやタイ東北部の農業発展の経験を生かした、アフリカ農業開発の可能性を研究しようとする動きがあり、報告書も出されています。この度、JICA研究所でセラード農業に関する総合的な研究を取りまとめたのを機に、世界銀行の農業開発分野の研究者との意見交換も視野に入れて、本セミナーが実施された背景があります。

冒頭の挨拶で、林信光世界銀行日本理事は、「世界銀行が『日伯セラード農業開発協力事業(PRODECER)』の経験から学ぶよい機会であり、日本とブラジルの長期協力によるプロジェクトの成功例だ」と述べました。

同じく冒頭で、ブラジル理事シニアアドバイザーのナタリア・スピア氏からも、「ブラジルのアマゾン熱帯雨林についてはよく知られているが、セラード地域については一般にあまり知られていないことから、経済成長と環境保護の両立を可能にした事例として、今後の展開が期待される日本、ブラジル、モザンビークの三角協力の成功への鍵として、このJICA研究所の研究が活用されることを期待している」との発言がありました。

細野所長は発表の中で、セラード農業がインクルーシブな発展として成功してきた要因を、土壌改良や熱帯の気候に適した品種開発などの技術的なイノベーションだけでなく、政府や民間セクターを巻き込んだ組織的なイノベーションの観点からも分析した成果を説明しました。さらに、セラード開発がもたらした効果として、農業生産だけでなく、バリューチェーンの形成によるアグリビジネスの発展や、雇用創出などによる地域格差是正のプロセスについてもデータを基に解説しました。

パネリストとして参加した、中南米カリブ局農業農村開発部門のウィレム・ジャンセン氏は、細野所長の発表が包括的で内容の濃いものであったと評価しつつ、新興国において農業分野の研究への投資が依然低水準であり、アフリカではさらに低い状況であることを指摘し、南南協力によって生まれるパートナーシップが、このような研究レベルの差を補えるものとして着眼していることを述べました。

アフリカ農村農業開発専門家のマイケル・モリス氏から、モザンビークを含めたアフリカの多くの地域では雇用創出が大きな関心事であり、アフリカで小規模農家を中心とした農業開発の可能性があるのかとの問いに、細野所長は、セラードにおいて雇用が創出された要因として、多様な農産品加工を含むバリューチェーンの形成を挙げました。さらに、所長はセラード開発において、一次産品の加工されない大豆を輸出するだけでなく、大豆油と大豆かすに加工し付加価値を高め、また大豆かすをとうもろこしなどと合わせた配給飼料として畜産に使用することにより一層付加価値を高め、雇用も拡大した例や、労働集約的な野菜や果物の生産拡大などの例も挙げました。

質疑応答の中で、ブラジルにおいては、アマゾンに次ぐ大規模な植生帯であるセラ-ドでの農業発展について今までほとんど紹介されていなかったことに鑑み、今回のセミナーは有意義で、かつタイムリーであったとの評価が寄せられました。

開催情報

開催日時:2012年6月22日(金)
開催場所:米国、ワシントンDC

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