障がい者の教育に投資を:ラミチャネ研究員が国連の「国際障がい者デー」イベントにて書籍を発表

2014.12.11

12月3日、第23回国際障がい者デーを記念し、ニューヨークの国連本部にて、「持続可能な開発:技術革新がもたらすもの(Sustainable Development: The Promise of Technology)」をテーマとした一連のイベントが開催されました。その一環として、JICA研究所はカマル・ラミチャネ研究員が執筆し、ケンブリッジ大学出版局から発刊される英文書籍『Disability, Education and Employment in Developing Countries: From Charity to Investment(途上国における障がいと教育、雇用:チャリティーから投資へ)』の発刊を記念したイベントを、国連経済社会局(UN-DESA)、国連開発計画(UNDP)、国連大学(UNU)との共催で開催しました。

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ローンチングイベントの様子

ミレニアム開発目標(MDGs)の最終目標年2015年を目前に控え、2015年以降の新たな開発目標を設定するための議論が最終段階を迎えています。その議論の中では、世界人口の15%を占める障がい者をも含めた、包摂的(インクルーシブ)な目標設定の重要性が指摘されています。障がい者の80%は途上国に居住しているとされる一方、そのデータや実証研究はこれまで、十分行われていません。

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ラミチャネ研究員

ラミチャネ研究員は、ネパール、インド、バングラデシュ、カンボジア、フィリピン等から得られた実証データに基づいて、途上国における障がいと教育、雇用の関係性について体系的に分析した研究を行ってきました。今回のイベントでは、その研究成果を含む書籍の主な内容について発表を行い、研究から得られた示唆として、障がい者の教育や雇用などの人的資本に投資をすることは、障がい者の社会的包摂や経済的なエンパワーメントにおいて重要であり、ひいては、その家族、社会全体の裨益につながることを示しました。

ラミチャネ研究員の発表を受けて、東京大学の澤田康幸教授、Rosangela Berman Bielerユニセフ本部プログラム事業部障がい部門チーフ、伊東亜紀子UN-DESA障害者権利条約事務局チーフが本書の政策的な示唆について議論しました。その中では、ポスト2015の議論において障がい者に関連する目標設定を意義のあるものとするためには、しっかりとした統計データが必要であり、本書がこの側面で高い成果を挙げていることと、障がい者の教育に投資する意義について具体的根拠を示したことが高く評価されると同時に、本書の分析フレームを用いてより多くの国のデータを分析し、研究を積み重ねることが必要であるといった意見が述べられました。

ラミチャネ研究員は、書籍の発刊イベントのほか、UN-DESAが主催したパネルディスカッションのイベントに、パネリストとして参加しました。同イベントでは、テクノロジーが障がい者の社会参画をどのように向上させるか、また、その具体的な政策や実践について意見交換がなされました。ラミチャネ研究員は、途上国に居住する障がい者の多くは貧困ゆえにテクノロジーへのアクセスが制限されているため、ユニバーサルデザインの適用を進めることにより、追加コストなしに障がい者がテクノロジーの恩恵を受けることが出来ることなどを指摘しました。

開催情報

開催日時:2014年12月 3日(水)
開催場所:米国ニューヨーク

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