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フクダ-パー・サキコ氏が特別招聘研究員に着任、日本のODAの理念を研究

2015.07.24

開発経済学者として広く知られるフクダ-パー・サキコ氏が、JICA研究所特別招聘研究員に着任し、日本の援助がどのような理念に基づいて実施され、どのような役割を果たしてきたのかについて調査・研究を進めています。

今回の研究は、開発援助を「チャリティー」と捉えるよりも、「援助国と被援助国が協力し合う互恵的なもの」と捉える方が、より効果的で有益であることを示すことを目指しています。開発援助をチャリティーと捉える考え方は、欧米のドナーが伝統的に抱いている考え方ですが、フクダ-パー氏は次のように指摘しています。

「チャリティーには、与える側と受け手側の間に権力関係を生みだすという根本的な問題があります。文化人類学者のマルセル・モース(Marcel Mauss)が指摘したように、寄付という行為は相互依存を期待した社会的な関係を築きます。マーシャル・サーリンズ(Marshall Sahlins)はこの考え方を拡大し、慈善としての寄付は与える側と受け手側の間に階層的な関係をもたらし、受け手側が与える側へ従属するようになると主張しました。そのため、いくら対等な関係としてのパートナーシップについて話しても、援助の受け手である途上国はドナーに対して無力になるのです」

フクダ-パー・サキコ氏

フクダ-パー・サキコ氏

フクダ-パー氏は5月15日から6月13日まで東京のJICA研究所を拠点に調査・研究を行い、アメリカに一時帰国後、7月11日に再来日し8月7日まで調査・研究を続ける予定です。

JICA研究所に滞在する間、フクダ-パー氏は、日本の開発援助の「規範的枠組み(normative framing)」を、OECD開発援助委員会(DAC)のドナー、そして中国やブラジルなどの新興ドナーの枠組みと、比較調査することにしています。フクダ-パー氏によれば、規範的枠組みとは「国の援助の基本原理を支える価値」であり、「融資などの援助手段と、経済、社会基盤への投資など、国の援助が優先する開発分野を決定するもの」だと言います。

今回の調査・研究では、文献調査と、政府官僚、国会議員、NGO、研究者などへのインタビューを通して、日本の援助はなぜ他のDAC諸国から批判的に見られてきたのか、なぜ日本の影響力はその資金的な貢献の大きさに比べて限定的なのか、なぜ日本は国際的な開発政策にあまり影響を与えることができないのか、などについて、考察していきます。

フクダ-パー氏は、日本のODAの理念と価値は、新興ドナーと重なっている部分が多いと言います。「DACドナーとも価値を共有してはいるのですが、DACドナーの中では日本は、常に少し外れたところにいます。新興ドナーと欧米ドナーとの間に位置していると言えます」。

フクダ-パー氏は東京生まれ。大蔵省(当時)勤務の父親の仕事の関係で、英国・ロンドン、米国・ワシントン、フィリピン・マニラで青少年期を過ごしました。1976年から79年まで世界銀行に勤務、エコノミストとして、主として中東および北アフリカ地域の農業、農村開発分野に携わりました。80年から94年までは、国連開発計画(UNDP)で、西アフリカ地域の主任、アフリカ地域の主席エコノミストなどを務め、95年から2004年の間、UNDP発行の『人間開発報告書(HDR)』の主執筆者として活躍しました。その後、2004年から2006年までハーバード大学ケネディ行政大学院ベルファー科学・国際関係研究センターの研究員を務め、2006年、ニュースクール大学大学院国際関係学科の教授となりました。現在、国連開発政策委員会の委員も務めています。

近年の関心分野は、国際開発目標と経済的・社会的権利の2つの分野であり、貧困や不平等、ジェンダー、人権に関する多数の論文や記事を執筆してきました。最近の出版物には、"Fulfilling Social and Economic Rights"や"MDGs, Capabilities and Human Rights: The Power of Numbers to Shape Agendas"などがあります。

ニューヨーク在住、海外で活躍しているフクダ-パー氏にとって、この夏の来日は、10歳の時以来の日本での長期滞在であり、「母親と過ごすのが楽しみ」と話しています。

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