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コロナ対策からの学びを気候変動対策に生かしていくには?安達上席研究員らが議論

2020.07.08

2020年6月24 日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)とJICA地球環境部気候変動対策室が共同で、ウェビナー「地球環境問題を通して考えるWithコロナの時代について—Future Earth Japanからの報告—」を開催し、2人の研究者を招いて意見交換を行いました。

冒頭、ファシリテーターを務めたJICA緒方研究所の安達一郎上席研究員は、「1992年のリオサミットから持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)という国際社会の総意に発展するまでにすでに四半世紀がたち、その間にも地球温暖化は進行している。新型コロナウイルスの流行(以下コロナ)も踏まえ、新しい社会様式への変革はできるのか、そのためにはどんな課題があるのかなどについて、Future Earthなどでの取り組みを踏まえての示唆をいただきたい」と趣旨を述べました。

Future Earth国際本部事務局日本ハブ事務局長の春日文子氏(左上)、JICA緒方研究所の安達一郎上席研究員(右上)、国立環境研究所地球環境研究センター副センター長の江守正多氏

まず、Future Earth国際本部事務局日本ハブ事務局長を務める春日文子氏が、持続可能な地球社会の実現を目指す国際協同研究プログラムを推進するFuture Earthの設立の背景、組織概要、取り組みについて説明。「今の時代は、人間活動が地球環境に大きく影響を与え、急速に、複雑に、相互に関わっている。課題解決には、専門分野や国・地域の枠組みを超えた対話と協創が必要」と述べ、Future Earthが世界各地に拠点を構え、国際機関や民間企業、教育機関、NGO、地方自治体など多様なアクターと連携しながらさまざまな分野で最先端研究を展開していることを紹介しました。また、コロナへの対応として、幅広いネットワークでつながったパートナーらの活動を発信・シェアするポータルサイトを設置したほか、オンライン上でのオープンフォーラムやウェビナーなどを開催し、コロナの影響を科学的に掘り下げ、社会の大転換にどう貢献できるか議論を深めていることを挙げました。

次に、地球温暖化の将来予測とリスク研究の日本での第一人者である国立環境研究所地球環境研究センター副センター長の江守正多氏が「気候危機・コロナ危機と社会の大転換」というテーマで報告しました。世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃以内に抑えることを目標とするパリ協定へのコロナの影響については、「コロナ感染拡大による移動自粛や経済活動の停止といった影響で、2020年のCO2排出量は前年比で約7%減少すると見られている。しかし、これが大気中のCO2濃度や気温にどれほどのインパクトがあるかというと、実はほとんどない。毎年7%のCO2排出量減少が続けばパリ協定が掲げる1.5℃目標の達成も可能だが、経済活動を我慢するコロナ対策のようなやり方では誰もやりたくないだろうし、火力発電所などの既存インフラを従来同様の寿命と稼働率で使い続けるだけで1.5℃を超えるだけのCO2を排出してしまう可能性が高い。パリ協定の達成には、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料から再生可能エネルギーに置き換えるしかない。コロナを機に、改めて社会経済システムの脱炭素化の重要性を再確認することになった」と振り返り、気候変動の危機への対応が引き続き待ったなしである状況を述べました。

温暖化対策をした場合としなかった場合の気温変化シミュレーションなどを交えて議論(江守氏提供)

続いて行われた質疑応答では、「コロナによる経済損失からの復興を、パリ協定に整合した形で進めるグリーン・リカバリーについてどういった議論があるか」という質問に対し、春日氏が「コロナによる犠牲者に貧困層が多いといった命の格差が目の当たりになり、気候危機でも同じ不公平が存在すると強く認識された。欧州では、地域間や世代間の格差と不公平をなくすことを念頭に復興基金を創設し、地球環境分野の研究により資金援助していく流れもある」と回答。また、「コロナ危機と気候変動を比べると、人々が自分ごととして危機を感じられるかどうかが大きく違うのではないか」という質問には、江守氏が「研究者が市民に情報を分かりやすく発信し、気候変動対策は生活の質を脅かすもの、という日本人の認識の大転換を目指していきたい」と返答するなど、活発な議論が行われました。

現在、JICA緒方研究所では気候変動分野の研究プロジェクトとして「不確実性下における気候変動適応対策の経済的評価に関する研究」を進めているほか、研究プロジェクト「SDGs下における環境/気候変動制度・政策の発展に向けての実証研究」において、現在までの環境制度・政策の知見をコロナ対策に向けた新たな社会制度の検討に生かす研究を進めていく予定です。

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