jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

プロジェクト・ヒストリー『未来ある子どもたちに「新しい体育」を―体育がつなげた仲間たちのカンボジア体育の変革』出版記念セミナー開催

2024.07.10

2024年6月7日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、プロジェクト・ヒストリー『未来ある子どもたちに「新しい体育」を―体育がつなげた仲間たちのカンボジア体育の変革 』出版記念セミナーを開催しました。同書籍は、特定非営利活動法人ハート・オブ・ゴールドが18年にわたりカンボジアで取り組んだ体育科教育支援の軌跡をまとめた1冊です。

ゼロから始まった新しい体育科教育の普及

冒頭、同法人の有森裕子代表理事があいさつに立ち、1996年に初めてカンボジアを訪れてから、自分自身の人生を変えたスポーツを通じた社会貢献をしたいと体育科教育の支援に至ったことを振り返りました。「活動を通して体育やスポーツの持つ可能性を知ることができたのは、私の人生にとっても大きなこと」と述べました。

特定非営利活動法人ハート・オブ・ゴールドの有森裕子代表理事

特定非営利活動法人ハート・オブ・ゴールドの有森裕子代表理事

続いて、JICAカンボジア事務所の讃井一将所長が登壇し、カンボジアの教育セクターの歴史を振り返り、教員や校舎の不足、就学者数の伸び悩み、学力向上の難しさなど、現在に至るまで同国の教育現場が直面してきた課題を説明。「国語や算数と比べると、情操教育としての体育は重要視されていなかった。そこでJICAは、JICA海外協力隊やNGOなど、さまざまなアクターと協力しながら教育の質の向上を目指している」と紹介しました。

JICAカンボジア事務所の讃井一将所長がカンボジアの教育セクターについて説明

JICAカンボジア事務所の讃井一将所長がカンボジアの教育セクターについて説明

次に、同書の著者で、ハート・オブ・ゴールドの西山直樹事務局長が書籍の内容を紹介。小学校から大学までカンボジアの体育科教育全体を俯瞰しながら、学習指導要領の作成や体育教員の育成支援などを進め、“新しい体育”を広めるために活動してきたことを振り返りました。

同書の著者で、ハート・オブ・ゴールドの西山直樹事務局長

同書の著者で、ハート・オブ・ゴールドの西山直樹事務局長

カンボジアでの学びを日本と世界に還元へ

ディスカッション・セッションでは、JICA中国センター市民参加協力課の澁谷和朗課長をモデレーターに、カンボジアでの体育科教育支援について振り返りました。

モデレーターを務めたJICA中国センター市民参加協力課の澁谷和朗課長

モデレーターを務めたJICA中国センター市民参加協力課の澁谷和朗課長

ハート・オブ・ゴールドの現地事務所責任者として支援の初期に関わった筑波大学の山口拓助教は、「2006年の支援開始当時、カンボジア側の受け止め方は?」という質問に、「行政官も体育教員も“現代的な体育”を知らず、壁しかなかった。カンボジアの関係者に新しい体育を受け止めていただくためには、教育省の行政官、現場の体育教員、体育教員養成校の教員など、全員の理解が大事だった。政策に現場の声が入るよう、さまざまなアクターを巻き込んで進めていった」と振り返りました。

「NGOの活動は一地域にしぼることも多いが、カンボジア全土を対象にした理由は?」との質問には、西山事務局長が「体育の学習指導要領と指導書を作成したら、カンボジア全土で使われるようにならなくては意味がない。ただ、体育を全国に広げるのは我々ではなく、カンボジア教育省の役目。そのため、教育省と現場の教員らを“体育を広める仲間”としてSNSのコミュニティーでつなげたりして、政策と現場が一貫性を持つよう意識して活動した」と説明しました。

ディスカッション・セッションに参加した筑波大学の山口拓助教(左)と日本体育大学の岡出美則教授

ディスカッション・セッションに参加した筑波大学の山口拓助教(左)と日本体育大学の岡出美則教授

教員養成の分野で携わった日本体育大学の岡出美則教授は、「日本の大学関係者としての気づきは?」との質問に対し、「日本の知見をいざカンボジア側に伝えようとしたとき、英語にするとうまく説明できないことが多々あった。つまり自分が理解しているつもりでも、そうではなかったと気づかされた。知見をどう伝えるか、また抜けていることはないか、日本側にとっても学び直す機会になった」と語りました。

「これからのスポーツ・体育と開発への期待は?」という質問には、山口助教は「スポーツ・体育を通じて社会にある課題を解決するためには、現地の声を聴いていけば、多様な課題に活用できるはず」、岡出教授は「日本の教員や研究者がスポーツを通じて世界に貢献し、その経験を日本の教育に還元できるのではないか」、西山事務局長は「カンボジアの事例をアセアンの中でも共有し、体育・スポーツでつないでいきたい」と答え、未来を見据えた議論でセミナーを締めくくりました。

本発刊セミナーの動画は以下からご覧になれます。

プロジェクト・ヒストリー『未来ある子どもたちに「新しい体育」を:体育がつなげた仲間たちのカンボジア体育の変革』へのリンク画像

プロジェクト・ヒストリー『未来ある子どもたちに「新しい体育」を:体育がつなげた仲間たちのカンボジア体育の変革』出版記念セミナー(YouTube)

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
トピックス一覧

RECOMMENDこの記事と同じタグのコンテンツ