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AUDA-NEPAD PBT・JICA緒方研究所合同ウェビナー「アフリカへのビジネス展開における日本企業のリスク認識とアプローチ」開催

2024.11.19

2024年8月21日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)とアフリカ連合開発庁(African Union Development Agency - New Partnership for Africa’s Development: AUDA-NEPAD)のポリシー・ブリッジ・タンク(Policy Bridge Tank: PBT)は、アフリカでのビジネスに対する日本企業のリスク認識とアプローチについて合同ウェビナーを開催しました。

開会あいさつを行ったAUDA-NEPADのパムラ・ゴパル経済分析・予測ユニット担当シニア・プログラムオフィサー(PBTリード・コーディネーター)は、公共セクターによる介入と民間企業の発展を通じたアフリカの経済成長を支えるため、日本企業との戦略的パートナーシップと連携が重要だと強調しました。

アフリカでビジネスを展開する上での鍵とは

続いて、株式会社AAIC Japan のコンサルタントである小郷智子氏が、ルワンダ、タンザニア、エチオピア、ウガンダでの研究と経験をもとに、日本企業の立場から見たアフリカでのビジネスのリスク認識とアプローチに焦点を当てて発表しました。小郷氏は、現在アフリカ諸国が必要としているのは開発協力よりもビジネス投資であるとし、日本企業がアフリカでのビジネス展開を成功させる鍵として、自分たちで実際に得た情報から現地の文脈を理解することでアフリカへの誤解を改めることや、企業社会起業家(Corporate Social Entrepreneurship: CSE)の枠組みを採用してアフリカの課題を意識することを挙げました。

例として、フォークリフト用バッテリーを製造する日本企業の株式会社ロケットバッテリーがルワンダでの販売を成功させたことを挙げ、その要因として、直接市場に働きかけるアプローチ、現地に駐在する社員らの尽力と情熱、経営陣による強力な後押し、献身的な現地パートナー企業との確かな協力関係があったと説明しました。同様に、世界的な衛生用品メーカーである日本企業のサラヤ株式会社によるアフリカでのビジネス展開でも、国連児童基金(United Nations Children’s Fund: UNICEF)と連携した企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)活動への参画、長期的関与を視野に入れた最高経営責任者の強いコミットメント、積極的なネットワークづくり、現地人材の研修・育成への投資が見られたと述べました。

小郷氏はまとめとして、アフリカでのビジネス展開に向け、日本企業は柔軟な組織構造を通じてビジネス展開の計画を検討・確認するとともに、ネットワークを広げ、社内にはない必須のスキルを持つ人材を現地でリクルートすることが不可欠だと強調しました。また、効率的で透明性の高い経営を実現する上では、プロモーターと経営陣が極めて重要な役割を担うとし、それこそがアフリカ市場への進出を成功させる鍵だと述べました。

株式会社AAIC Japanのコンサルタント、小郷智子氏

ガーナでの成功要因とリスク要因を見極める

次に、JICAガーナ事務所の鈴木桃子所長がガーナでビジネスを展開する日本企業の特徴を説明し、同国での成功要因として、政治的安定、英語が通じる環境、日・ガーナ間の草の根レベルでの強い交流を挙げました。こうした成功要因に加え、日本企業がアフリカでビジネスを展開していくにはアフリカの中小零細企業の品質・生産性向上も不可欠であり、その手法としてカイゼンが産業開発の主要戦略になると位置付けました。

一方、ガーナでのリスク要因としては、国際通貨基金(International Monetary Fund: IMF)による財政再建に向けた救済措置、高いインフレ率、同国政府側の担当者との信頼関係を築く難しさ、さらに、貿易に携わる企業にとって重荷になる輸入品への高い関税を挙げました。鈴木所長は、こうした困難を乗り切るためにはリスク低減戦略が重要だとし、政府に人脈のある現地人材の採用、アフリカでのビジネス経験がある企業との提携、文化面や業務面での食い違いを解消する橋渡し役として日本とガーナ以外の国からの中間管理職の登用を挙げました。

JICAガーナ事務所の鈴木桃子所長

投資環境の改善に向けた地域的な取り組みが重要

ケニア公共政策研究分析所(Kenya Institute for Public Policy Research and Analysis: KIPPRA)のローズ・ングギ所長は、ケニア基準局やケニア投資庁など、イノベーション促進、民間セクター投資、品質管理において重要な役割を担う機関を幅広く紹介しました。地域レベルでは、アフリカ大陸自由貿易圏(African Continental Free Trade Area: AfCFTA)、アフリカ信用格付機関(Africa Credit Rating Agency: ACRA)といった組織のほか、世界銀行による「ビジネス環境(Business Ready)」と題した新報告書でまとめられたBusiness Ready Indexといった取り組みがもたらす投資環境改善の利点を取り上げました。また、アフリカでは若年層の失業が依然として重大な課題であり、経済成長を後押しし、国の安定を強めるためにも若者の参画を促すことが重要だと指摘しました。

ケニア公共政策研究分析所(KIPPRA)のローズ・ングギ所長

ディスカッションセッションでは、本間徹AUDA-NEPAD長官シニアアドバイザー(JICA国際協力専門員)がモデレーターを務め、アフリカでビジネス展開をする日本企業がリスクを軽減するための実践的なアプローチに焦点を当てて議論が行われました。本間シニアアドバイザーは、リスクの軽減には、日本と国際機関の連携が重要であり、それを支える上でアフリカ各国政府やAUDA-NEPADのような地域機関が果たす役割の重要性を論じました。

質疑応答ではさまざまな議論が行われ、例として、マダガスカルからの参加者からは「アフリカの企業が日本企業との信頼と長期的な関係を築くためにはどうしたらいいか?既存の結びつきがない状況では第一歩が難しい」といった質問がありました。これに対し鈴木所長は、既にアフリカで足場を確立している日本企業とつながるべきだと応じ、こうした企業には広範なネットワークと経験があることを強調。具体的には、エジプト、ガーナ、ケニア、南アフリカといった国々に既に進出している日本企業の拠点は、アフリカの新興企業が情報やサポートを得る上で有用であると回答しました。

閉会あいさつでゴパル・シニア・プログラムオフィサーは、バリューチェーンやエネルギー供給といったアフリカでのビジネス展開の重要な課題に対処するため、今回のようなイベントや対話の継続が重要だと強調。また、政策や投資環境の改善に向けた現行の取り組みを継続する必要性を指摘するとともに、日・アフリカ間のビジネス連携を成功させるには、人材、技術移転、高い品質基準が重要だと強調し、ウェビナーを締めくくりました。

ディスカッションでモデレーターを務めた本間徹AUDA-NEPAD長官シニアアドバイザー(JICA国際協力専門員、上段左)と、閉会あいさつを述べたAUDA-NEPADのパムラ・ゴパル経済分析・予測ユニット担当シニア・プログラムオフィサー(PBTリード・コーディネーター、上段右)

YouTube

本ウェビナーの動画は、以下のリンクからご覧いただけます(動画は英語です)。

Seminar ”Japanese Companies' Perception of Risks and Approaches to Doing Business in Africa"

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