JICA緒方研究所・UNDP共催ウェビナー「SDGsと人間の安全保障のための行動を加速する:未来サミットとその先へ」開催
2024.11.19
2024年9月5日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)と国連開発計画(United Nations Development Programme : UNDP)は、JICA緒方研究所のフラグシップ・レポート「今日の人間の安全保障」第2号「複合危機下の政治社会と人間の安全保障」 の発刊を記念し、ウェビナー「SDGsと人間の安全保障のための行動を加速する:未来サミットとその先へ」を共催しました。
開会あいさつでJICAの田中明彦理事長は、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)達成に影響する複合危機を取り上げ、そうした課題に対応する上での人間の安全保障の重要性を強調しました。例としてJICAによる南スーダン、ウルグアイ、ザンビアでの水に関連したプロジェクトを挙げ、人びと中心、マルチセクター、予防指向に重点を置く人間の安全保障アプローチの適用が、人びとに良い影響をもたらしたことを説明しました。さらに、SDGs達成に向けて最も脆弱な人びとを取り残さないよう、連帯とセクターを超えた協力を呼びかけました。
開会のあいさつをしたJICAの田中明彦理事長
続いて、さまざまな分野の専門家からのビデオメッセージが上映されました。UNDPの徐浩良(シウ・ハオリャン)副総裁は、暴力的紛争や気候災害など、今日生じている複合的な人間の安全保障上の危機を指摘した上で、人間の安全保障の概念が30年前に提唱されたことで安全保障の焦点が領土の防衛から個人の保護へと移ったことに触れ、この概念が現在まで「開発の盲点」に光を当て続けていると述べました。さらに、統合的な政策立案の必要性や、コミュニティーの貧困削減と生計向上を支援するUNDPの継続的な取り組みも強調しました。
さらに、メルナス・モスタファビ国連人間の安全保障ユニット長、インドの社会運動団体エクタ・パリシャッドを創設したP.V.ラジャゴパル氏、フィリピンで平和構築に取り組むスロンピース社のジョーベン・レイエス戦略アドバイザー、ソロモン諸島のベン・リッキー国家ヘルシーセッティングコーディネーターからも、ビデオメッセージを通じて人間の安全保障アプローチに対する知見が提供されました。 また、ノーベル経済学賞受賞者で米国コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ 教授とJICA緒方研究所の峯陽一 研究所長による対談動画 から、「人間の安全保障上の懸念に対処するためには信頼構築が重要だ」と語るスティグリッツ教授の発言も紹介されました。
基調講演では、峯研究所長が人間の安全保障を脅かす複合危機を強調し、早急な行動が必要だと述べました。さらに、SDGs達成に向けた進捗を加速する鍵として、(1)人間の安全保障と尊厳といった普遍的な理想を再考・再確認する、(2)SDGsや人間の安全保障の進捗を効果的に把握するための測定ツールに投資する、(3)コミュニティーに変化を起こし、誰一人取り残されないように現場志向のアプローチを採用する、という3つの行動を提案しました。さらに、国連が主催した2024年9月22〜23日の「未来サミット」は、こうした課題に向き合う重要な機会だと論じました。
基調講演を行ったJICA緒方研究所の峯陽一研究所長
続くパネルディスカッションでは、SDGs達成に向けた世界的な課題と国際社会の分極化の拡大にどう対応していくべきか、モデレーターを務めたJICA緒方研究所の宮原千絵 副所長がパネリストに問いかけました。
OECD開発援助委員会(Development Assistance Committee: DAC)のカーステン・スタール議長は、分極化について、世界で極度の貧困下にある人口のうち、73%が「States of Fragility 2022」で示した脆弱な状況で暮らしていると述べ、暴力的紛争と脆弱性が増していると指摘。さらに、世界の指導者たちを巻き込み、開発と平和に関する共同での戦略を通じて各国が協働していけるような多国間主義を再び活性化させられるよう、資金調達やコミュニケーション戦略への新たなアプローチが必要だと強調しました。
UNDP人間開発報告書室のペドロ・コンセイソン室長は、世界の人びとの間に不安全が広がっており、7人のうち6人もが不安を感じていると指摘しました。この不安全が政府などに対する信頼の欠如を助長するとともに、分極化を進行させ、人びとを政治的に過激化させることにつながっていると指摘。人間の安全保障を推進することで信頼を再構築し、人びとの主体性(agency)を取り戻し、分極化を緩和することができると主張しました。
タイのタマサート大学のシリポン・ワチャワルク教授は、市民社会を強化し、地元コミュニティーを意思決定に参画させる必要性に重点を置いて回答。ワチャワルク教授は、現地アクターのエンパワメントが重要だと強調し、政府は市民社会を対立の相手ではなく協力者と見なす必要があると指摘しました。また、人間の安全保障の概念やSDGsを教育に取り入れることにより、若者の関与を拡大するよう呼びかけました。
JICAの原昌平理事は、トルコやバングラデシュでのプロジェクトを含め、災害リスクの軽減とインフラ開発におけるJICAの実践的な事例を紹介。人間の安全保障は多面的な概念であり、インフラ開発では特に人びとを中心に置いたアプローチを通じて実践すべきだと強調しました。さらに、気候変動や国境を越える危機といった課題に取り組むには、人びとをエンパワメントする現場での取り組みと国境の枠を越えた連帯の双方が重要になると指摘しました。
OECD開発援助委員会のカーステン・スタール議長
UNDP人間開発報告書室のペドロ・コンセイソン室長
タマサート大学のシリポン・ワチャワルク教授
JICAの原昌平理事
質疑応答では、さまざまなトピックが議論されました。「分極化の克服における女性の役割とは?」と問われたスタール議長は、平和構築においてジェンダー平等は重要な分野横断的な課題だと強調しました。また、安定した社会を構築し、持続可能な開発を前進させるためには、和平プロセスへの女性の参加が不可欠だと言明しました。コンセイソン室長は、「人道・開発・平和の連携において、どうしたらより効果的な各国の協働を促すことができるか?」との質問に対し、さまざまな関係者が互いに異なる利害や動機を持つことから、官僚的、政治的、財政的といった多様な課題があると指摘し、世界のリーダーたちがどれだけリスクをとることができるかだと強調しました。ワチャワルク教授は、「市民社会、国、国際社会のアクターらの結びつきを強めるためにはどうすべきか?」との質問に対し、市民社会により多くの情報を提供し、政策立案のプロセスに積極的に巻き込む必要があるとの考えを示しました。原理事は「防災の取り組みをどう効果的にするか?」という質問に対し、全ての不確実性を考慮して予測し、あらゆる災害に完全な備えをすることは不可能であることから、長年の協力を通じて共有された経験から学ぶことが欠かせないと述べました。
モデレーターを務めたJICA緒方研究所の宮原千絵副所長
最後に、峯研究所長は閉会あいさつで、ステークホルダー間の信頼に基づく対話と、人間の安全保障を守る民主的ガバナンスの重要性を強調。また、意思決定においては、特に社会から疎外された人びとや若者世代の声を公正に反映する必要があると指摘しました。
本ウェビナーの動画は、以下のリンクからご覧いただけます。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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