プロジェクト・ヒストリー『流域コモンズを水銀汚染から守れーウルグアイにおける統合的流域水質管理協力の20年』出版記念セミナー開催
2024.11.28
2024年10月11日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、プロジェクト・ヒストリー『流域コモンズを水銀汚染から守れーウルグアイにおける統合的流域水質管理協力の20年 』出版記念セミナーを開催しました。
セミナーにはオンラインと対面で実務者、研究者、学生などが参加
JICA緒方研究所の宮原千絵
副所長による開会のあいさつに続き、同書の著者であるJICA地球環境部の吉田充夫国際協力専門員が内容を紹介しました。
ウルグアイは、農業や牧畜業の発展にともなって河川の水質劣化に直面し、2004年に水へのアクセスを“基本的人権”と憲法に規定した世界最初の国とされます。吉田専門員は、JICAがウルグアイ環境総局(現・ウルグアイ環境省)とともに、2003年以来20年近く行ってきた河川水質分野の技術協力を振り返り、第1期でモンテビデオ首都圏河川水質管理のマスタープランを策定し、それに基づいて第2期でサンタルシア川流域の汚染源管理や水質管理、モニタリングの能力向上に取り組み、その後水銀汚染が発見されたこと、第3期には日本の経験を生かしてこの水銀汚染の調査と対策計画策定を行い、汚染源企業の汚染者支払原則のもと対策が実行され、一人の犠牲者も出さず未然に被害を防止することができたことを説明しました。
吉田専門員は、「それらを経るうちに、同国の関係者に“流域コモンズ(共有地)”という強い共通認識が生まれた。ウルグアイの自助努力によって、政府関係省庁、地方行政・公社、水資源の利用者と事業者、市民社会が参加する流域委員会も形成され、統合的な流域水質管理が実現してきた」と振り返りました。
本書の著者であるJICA地球環境部の吉田充夫国際協力専門員
JICA地球環境部環境管理・気候変動対策グループの木村友美課長がモデレーターを務めたディスカッションセッションでは、プロジェクトが成功した要因や今後の課題、他国にも生かせる教訓などについて、プロジェクトに携わった関係者が議論しました。
モデレーターを務めたJICA地球環境部環境管理・気候変動対策グループの木村友美課長
プロジェクト成功の要因について、第2期で技術協力プロジェクトの総括を務めた日本工営株式会社環境技術部の奥田到参事は当時を振り返り、ウルグアイの人々が水を守らなくてはいけないという強い危機意識を持っていた、流域委員会をつくってみんなで管理していく機運ができていた、当時の左派政権の下で政策が動いたという好条件が重なったことを指摘しました。
同じく第2期のプロジェクトに関わったJICA四国センターの田村えり子所長は、プロジェクト成功の背景には、カウンターパートの切迫感とコミットメントが強かったこと、第3期では水銀に関する水俣条約が採択された時期に水銀汚染が見つかったために国際的な注目度が高かったことを説明。また他国に生かせる教訓として、汚染に関する情報を隠さずに対策開始時点でウルグアイ政府と情報公開について合意していたことや、日本の専門家がウルグアイの担当者と粘り強くコミュニケーションを試みて信頼関係を構築したことを挙げました。
プロジェクト終了後にウルグアイ自身の努力で河川の水質改善ができた要因については、第2期でデータ解析や水質シミュレーションなどに携わった日本工営環境技術部の檜枝俊輔次長が回答。シミュレーションによる対策効果の検討の過程で、カウンターパートと共に、地方、水資源、上下水、農業などの関連機関を訪問し、現状把握や問題解決に向けた議論を重ねて、水質改善に向けた組織連携の素地をつくったこと、当初は紙ベースだった水質データがカウンターパートの熱意と尽力でデジタル化されたことで、データ解析から公開までが可能になり、改善に向けた努力が続けられたことを指摘しました。
日本工営株式会社環境技術部の奥田到参事
JICA四国センターの田村えり子所長
日本工営株式会社環境技術部の檜枝俊輔次長
東京科学大学環境・社会理工学院の錦澤滋雄准教授
ウルグアイは2023年、厳しい干ばつに見舞われました。2013年に設立された流域委員会は全国14流域に波及していますが、気候変動といった地球規模の環境問題には対応しきれていません。市民参加型の合意形成を専門とし、第3期の第三国研修などに携わった東京科学大学環境・社会理工学院の錦澤滋雄准教授は、ウルグアイの今後の課題について回答。流域委員会の規模が大きくなって関係者が増えていくと個々の当事者意識が希薄化する傾向にあるため、小さな単位ごとにいかに取り組みを進めていけるかが鍵だと述べました。
質疑応答を経て、JICA地球環境部の柴田和直次長兼環境管理・気候変動対策グループ長は、「気候変動、生態系破壊、環境汚染が深刻化し、私たちが当然と思っていたコモンズが脅かされている。ウルグアイで成功したマスタープラン策定、データ活用と情報公開、参加型の合意形成などの経験から学び、地球環境の危機に取り組んでいく機運を高めていきたい」と閉会のあいさつをし、セミナーを締めくくりました。
本セミナーの動画は以下からご覧になれます。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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