日本財政学会特別セッションに峯研究所長が参加し人間の安全保障と財政民主主義について討議
2025.12.19
2025年10月26日、龍谷大学深草キャンパスにおいて、日本財政学会第82回大会 の特別セッション「人間の安全保障・財政民主主義・サスティナビリティ」が開催されました。
JICA緒方研究所の峯陽一 研究所長は、第1報告として、人間の安全保障の理念と、その地域レベルでの指標化の試みを紹介しました。人間の安全保障の核心には、「誰一人取り残さない」という価値観があり、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)や日本の開発協力大綱にも明確に位置づけられています。峯研究所長は、アマルティア・セン氏の飢饉分析を手がかりに、全国平均では見えない格差を可視化する脱集計化の手法の重要性を強調しました。その上で、NPO法人「人間の安全保障フォーラム」が宮城県・愛知県などで市町村単位の詳細な指標を作成し、客観指標と主観指標のズレや地域ごとの課題を可視化してきた経験を紹介しました。
特別セッションに参加したJICA緒方研究所の峯陽一研究所長
その取り組みの成果として出版された書籍は、以下のリンクよりご覧いただけます。
立命館大学の森裕之教授による第2報告では、日本社会で深刻化する「孤立」問題を取り上げ、人と人のつながりとしてのコミュニティーを再構築すべきだと論じました。OECD調査などから日本の社会的孤立が著しいことを示した上で、従来の財政学が個人を基本単位として設計されてきたと指摘。近年の生活困窮者支援、介護保険事業、重層的な支援体制の整備など、制度が徐々に地域コミュニティーへ役割を移している動きを整理しました。森教授は地方自治体の事例を紹介しながら、行政責任の放棄ではなく、地域が互いを支え合う仕組みを再編する試みとして、これらの動きを評価しました。
茨城大学の掛貝祐太准教授は、第3報告として、市民参加、直接民主主義、社会運動に基づく財政民主主義の新しいアプローチを提示しました。住民の行動を通じて逆進課税を廃止したスイスの事例を紹介し、強い個人だけではなく、異議申し立てを支える人間関係が重要な政治資源となる点を強調しました。また、年金改革のようにイシューを細分化して問う仕組みによって、SDGsのような総論では埋もれがちな論点を可視化し、民主主義を活性化する効果があるのではないかと問いかけました。他方で、過剰な計測や官僚制の問題点など、人間の安全保障指標とコミュニティー政策の接点や論争点を示しました。
討論では、まず主宰者である龍谷大学の只友景士教授がセッション企画意図を説明し、人間の安全保障が公共政策の革新を促す視角であり、ケイパビリティー論を通じて政策評価の軸が再編され得ると指摘しました。また財政民主主義の危機、多様化する公共サービス、コミュニティー政策の意義を踏まえ、3人の報告者に具体的な質問を投げかけました。慶應義塾大学の井手英策教授は、3つの報告が人間の尊厳、共同性、民主主義といった価値の再定義につながると評価し、指標化の意義や主観と客観の関係、コミュニティー財の概念的整理、計測にまつわる問題などに関する論点を提示しました。続く応答では、掛貝准教授が教育や情報の周知など制度的工夫の必要性を強調し、峯研究所長は正確な数字に基づくコミュニケーションは尊厳を実現させる武器になりうると述べました。森教授は、つながりの中で自尊感情を持てることが大切であるとし、孤立を土台から解消する政策の重要性を強調しました。
人間の安全保障に関するJICA緒方研究所の取り組みについては、以下のリンクからご覧いただけます。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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