「オープン・イノベーションと開発」研究会実施報告書

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情報社会の進展に伴い、情報通信技術(ICT)とそれらをプラットフォームとして展開される新たな生産・サービス・企業活動形態が、広範な産業界に応用されようとしています。開発途上国においても、都市部を中心にICTの利用は急拡大し、イノベーションに国境はなくなりつつあります。

2015年9月の国連サミットで合意された「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」でも、ICT利用の拡大とグローバルに人や組織がつながることが、医薬品やエネルギーなど多岐にわたる分野での科学技術イノベーション(STI)とともに、人類の進歩を加速し知識社会を発展させるとし、持続可能な開発目標(SDGs)具体的な開発目標として、SDG 8(成長と雇用)、SDG 9(インフラと工業化、イノベーション)、SDG 17(実施手段・パートナーシップ)において、STIの促進がターゲットとして取り上げられています。

開発途上国における経済・社会開発では、従来型の工業・産業開発路線ではなく、ソフトウェアやサービスのイノベーションを軸とする「オープン・イノベーション」が、新たな可能性を発揮するものとして期待されています。市民レベルで展開されているデジタル工房「ファブラボ」も、「オープン・イノベーション」の一形態であり、地域開発と産業開発の促進に大きなポテンシャルをもつと考えられます。

このような仮説に基づき、今後の途上国の(経済)開発の展開も見据えつつ、JICA研究所は2015年9月、「オープン・イノベーションと開発」研究会を発足させました。研究会では、(1) 「オープン・イノベーション」は開発のコンテキストにおいてどのような効用を想定することが可能か、(2) (1)を踏まえ2030年アジェンダにおけるSTI関連のSDGs達成に向けた取組みにJICAとしてどのようなアプローチを取り得るか、(3) 開発協力大綱にある「質の高い成長」に関しJICAは「オープン・イノベーション」のコンテキストをどのように活用できるか、について示唆を得るため、(開発)経済学およびイノベーション分野における国内有識者の参加を得て、2016年2月までに4回にわたる研究会を開催し多面的な検討を行いました。本報告書は、その成果をまとめたものです。

発行年月
2016年12月