アジアの都市大気環境改善の方策に関する研究 最終報告書
JICA緒方研究所について
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都市の大気汚染は健康と社会への負の影響をもたらすため、世界中で大きな注目を集めています。実際に、持続可能な開発目標(SDGs)には、目標3(すべての人に健康と福祉を)、目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)、目標11(住み続けられるまちづくりを)などにおいて、大気汚染の改善に関連する目標が掲げられています。
この報告書は、JICA、アジア工科大学院(AIT)、日本環境衛生センター・アジア大気汚染研究センター(ACAP)によって実施された共同研究の最終成果をまとめたものです。
同研究の目的は、バンコク首都圏の中心部であるバンコク都とその郊外にあるパトゥムターニー県の2つのサイトにて、粒子状物質(PM)のレベルと組成、酸性ガス濃度、雨水中のイオン成分を明らかにすることです。
分析結果として、少なくとも乾季において、PM2.5濃度がタイの規制基準およびWHO指針の基準の許容年平均値を超えていることが確認されました。微粒(PM2.5)および粗粒(PM>2.5)のPMにおける平均濃度は、郊外(パトゥムターニー県)で中心部(バンコク都)よりも低いわけではないことも明らかになりました。さらに、運輸・交通とともに、野焼き由来の物質がPM2.5濃度に関連していることが示唆されました。
本研究の知見は、大気環境改善のための政策への科学的根拠を提供するものです。本研究結果をまとめたこの報告書は、PMのモデルシミュレーションは年間を通じて実施されるべきであることを示唆し、そのシミュレーションがPM排出削減による大気環境、気候変動、健康などへの影響に関する分析においても利用可能な知見になりうるといえます。
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