No.38 Impact Investors in the Microfinance Sector: Empirical Analysis of Debt Investment in Normal and Crisis Periods
JICA緒方研究所について
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マイクロファイナンス部門は外国資金に大きく依存しており、国際的な資本市場の変動に対して脆弱である。また、マイクロファイナンス機関(MFI)は、伝統的な金融機関とは異なり、マイクロファイナンス専門の投資機関、開発金融機関、政府などのいわゆる「インパクト投資家」による社会的責任投資(SRI)に依存する傾向にある。本研究では、2017年第1四半期から2021年第4四半期におけるカンボジアのMFIへの債務投資のパターンを調査し、世界的なコロナウイルスのパンデミックの期間を含めて分析した。
本研究では、カンボジアのMFIへの債務投資(debt investment)に関する詳細な情報(債務の貸出額、金利、満期、投資家の属性など)を含む独自のデータセットを構築し、コロナウイルスパンデミック前後で債務条件がどのように変化したかを、差分の差(Difference-in-Differences)手法を用いて検証した。
その結果、インパクト投資家と非インパクト投資家の間で投資行動に違いが見られることが分かった。インパクト投資家は、アウトリーチの高いMFIを選択する傾向が強いことがわかった。しかし、その債務投資は主に大規模なMFIに集中していた。また、インパクト投資家は他の機関投資家よりも低金利で貸し付けを行っているという明確な統計的な結果は得られなかった。
しかし、インパクト投資家はパンデミックの期間中もMFIへの債務提供を継続し、非インパクト投資家よりもパンデミックの金利上昇への影響が小さいことが確認された。この結果は、インパクト投資家からの資金提供は経済的なショックに対して頑健である可能性を示唆しており、インパクト投資家からの資金は、金融市場の危機時にMFIが貧困層への貸出事業を継続するためのバッファーとなる可能性があることを示唆している。
キーワード:インパクト投資家、マイクロファイナンス、ESG投資、金融包摂、COVID-19、差と差の分析
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