No.42 Trust and Social Networks: Evidence from a Household Survey in Cambodia
JICA緒方研究所について
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本研究は、2021年にカンボジアの首都プノンペンおよび6州を対象に実施された家計調査のデータを用いて、コミュニティにおける信頼とソーシャルネットワークとの関係を分析したものである。社会関係資本の重要な要素である信頼およびソーシャルネットワークは、特に制度が未発達な途上国経済において、経済活動への参加やコミュニティの結束に大きな役割を果たしている。本分析では、①近隣への信頼、②地域の安全に対する信頼、③地域リーダーへの信頼という3側面に焦点を当て、回答者のアンケート回答によって測定した。たとえば近隣への信頼は、「ほとんど信頼できない」から「すべて信頼できる」までの選択肢で、コミュニティの大半の人々を信頼できるかどうかを尋ねて評価した。同様の尺度を用いて地域の安全と地域リーダーへの信頼も測定している。分析の結果、信頼水準が高いほどソーシャルネットワークが強固であることが統計的に示された。低水準では近隣への信頼がネットワークの強さと関連し、高水準では地域の安全、地域リーダーへの信頼、および金融包摂(マイクロファイナンス機関からの借入)がネットワークの強化と正の相関を示した。また、女性世帯主の世帯ではソーシャルネットワークが弱い傾向にある一方、農業従事者が世帯主の世帯や農村部の世帯は、農業活動の共同性により、ソーシャルネットワークが強固である傾向が確認された。以上の結果から、コミュニティにおける信頼の醸成、ジェンダー格差の解消、農村地域の社会的つながりの活用などがソーシャルネットワーク、ひいては社会関係資本を強化する上で重要であることが示された。
キーワード: 信頼、社会ネットワーク、社会関係資本、カンボジア
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