No.19 新興開発パートナーとの知識共創とサーキュラー協力:中南米における可能性
JICA緒方研究所について
JICA緒方研究所について
近年の国際協力では、資金や技術の一方向的な移転にとどまらず、知識や経験を多方向に循環させながら、相互学習と知識共創を促す協力のあり方が重視されてきている。JICAは、第三国研修、第三国専門家派遣、パートナーシップ・プログラム等を通じて、知識や経験の共有を基盤とする協力を長年実施してきた。しかし、こうした知識や経験がどの主体間で共有され、どのように相手国・地域の文脈に応じて適応され、さらに第三国・地域へ展開されているのかについては、十分に体系化されていない。
本稿は、この問題意識に基づき、中南米地域における知識や経験の共有・適応・再展開のプロセスに着目し、「サーキュラー協力」という概念を用いて整理するものである。本稿の目的は、中南米地域におけるサーキュラー協力の認識と実践を明らかにするとともに、JICAにおける協力設計への示唆を導くことである。本稿の意義は、サーキュラー協力を新たな制度や協力類型としてではなく、途上国間で行われる南南協力や、日本などの開発協力実施主体や国際機関がこれを支援する形態である三角協力(外務省2011;JICA 2017)に内在する知識共創のダイナミズムを捉える分析視角として位置づける点にある。
手法としては、文献調査に加え、中南米の開発協力主体への質問票および中米統合機構(Sistema de la Integración Centroamericana:SICA)、カリブ共同体(Caribbean Community:CARICOM)の実務家への半構造化インタビューをもとに、理念・制度・運営の三つの観点から分析を行った。
分析の結果、サーキュラー協力は、現時点では独立した制度や協力として確立しているわけではないものの、既存の南南協力・三角協力・地域協力の中に、知識共有、文脈に応じた適応、第三国・地域への展開、学習の環流といった要素が確認された。これらの実践を継続的な協力プロセスとして発展させるためには、案件形成段階から知識循環を設計し、評価、報告、知識の蓄積・共有・活用、ネットワーク維持の仕組みに組み込むことが重要である。
以上を踏まえ、本稿は、JICAがサーキュラー協力を推進するうえで、三角協力の蓄積を活かしつつ、相互学習、共創、多主体連携、日本を含む参加主体の学びの環流を明示化・仕組み化する必要があることを示す。これにより、JICAは中南米を含む地域ネットワークにおいて、知識・制度・経験が多方向に循環する協力の調整主体としての役割を強化し得る。
キーワード:知識共創、中南米、三角協力、サーキュラー協力