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Irrigation Infrastructure and Trust: Evidence From Natural and Lab-in-the-field Experiments in Rural Communities

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灌漑(かんがい)インフラを導入することで信頼を築けるか、また、その場合どのような信頼が築かれるのかを探るため、本論文では信頼形成の二つのプロセスに関する検証を行いました。一つは合理的な個人同士が繰り返し関わり合うことで確立される個別の信頼醸成のプロセス、もう一つは合理性によらない習慣に基づく一般的な信頼醸成のプロセスです。

農業従事者の灌漑インフラへのアクセスと信頼との因果関係を明らかにするため、スリランカの農村部における灌漑開発プログラムの受益者を対象に、フィールドでのラボ実験(信頼ゲーム)を実施しました。特に、当該プログラムでの灌漑農地の割り当てが基本的にランダムに実施されたという状況に注目し、灌漑が信頼の醸成に与える因果効果を推定しました。これにより、主に二つのことが明らかになりました。第一に、社会関係にかかわらず、各農家が灌漑を利用した期間が長くなるほど、コミュニティーメンバー間の信頼が単調に増加してきたことです。第二には、灌漑の使用年数と信頼との関係は、地理的に近接したグループ内のメンバーとグループ外のメンバーの間で異ならない可能性があることです。これらの結果は、人々が繰り返し関わり合うことにより「個別の信頼 (particularized trust)」が形成されるという可能性を排除できないものの、灌漑地区での習慣を通じた「一般的な信頼 (generalized trust)」の形成が相対的に重要であることを示しています。「一般的な信頼」は、広域における匿名の市場取引促進に重要な役割を果たすと考えられるため、本研究の分析結果は開発途上国のインフラプロジェクトの設計において重要な示唆を持っていると言えます。

本論文は、JICA緒方貞子桃開発研究所が国際水管理研究所と共同で行った研究プロジェクト「スリランカにおける灌漑インフラの貧困削減効果」の成果です。

著者
青柳 恵太郎、 澤田 康幸、 庄司 匡宏
発行年月
2022年5月
出版社
World Development
言語
英語
ページ
13ページ
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #農業開発・農村開発
  • #貧困層支援・格差是正
研究領域
経済成長と貧困削減
研究プロジェクト