The Emerging Human Security Norm in East Asia: Toward an Epistemic Community
JICA緒方研究所について
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難民や移民、人身取引被害者が安全を脅かされる経験については、これまで人間の安全保障の観点から研究が行われてきました。しかし、国際法における越境組織犯罪や国際テロ、個人の刑事責任といった問題については、この視点からの研究は十分ではありません。そのため、人間の安全保障の課題を国際法の文脈に位置付けた体系的な学術研究が必要です。
JICA緒方研究所の峯陽一客員研究員と武藤亜子上席研究員は、書籍『Research Handbook on International Law and Human Security』の中で、「The Emerging Human Security Norm in East Asia: Toward an Epistemic Community」と題するチャプターを寄稿しました。
このチャプターでは、広く東アジア地域(日本、中国、韓国、ASEAN諸国)を対象とし、人間の安全保障とエンパワメントの実践について考察しました。人間の安全保障が現地の文脈で受容、拒絶され、変容する様相に議論の焦点を置いています。JICA緒方研究所の研究プロジェクト「東アジアにおける人間の安全保障の実践」において浮き彫りになった幾つかの特徴を取り上げます。まず、現地のステークホルダーらは、人間の安全保障に対するさまざまな脅威をすでに認識し、国家安全保障と人間の安全保障は対立関係ではなく補完関係にあると考えていました。次に、恐怖と欠乏からの自由や、尊厳を持って生きる自由、保護とエンパワメントなど、人間の安全保障の規範を構成する個別の要素は、すでに地域全体で受容されています。最後に、日本では属性別にまとまった「人間の安全保障指標」が国・県レベルが整備されつつあり、地域レベルでは人間の安全保障のアジェンダに携わる専門家の連帯が進んでいます。著者らは、人間の安全保障が地域全体に根ざすには、地域—国—地方の全てのレベルで受け入れられる必要があると強調しています。各レベルのステークホルダーによる努力の結果、広く東アジア地域において、人間の安全保障の知識共同体が徐々に確立されていると指摘します。
この書籍は、人権・人間の安全保障におけるユネスコチェアが設置されているグラーツ大学(オーストリア)の法学部教授、Gerd Oberleitner氏の編によるものです。学術出版社Elgar Publishingの書籍シリーズ「Research Handbooks in International Law」の一部で、以下のリンクから購入いただけます。
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