紛争影響国における全国スポーツ大会の効果の持続性—南スーダン・「国民結束の日」を事例として—
JICA緒方研究所について
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本稿では、南スーダンの「国民結束の日」(NUD)と名付けられた全国スポーツ大会が参加アスリートに与える効果の持続性について、アンケートによるデータとインタビューによる証言を用いて、NUDに初めて参加したアスリートと過去にも参加したことがあるアスリートとの比較から検証しました。
その結果、過去にNUDに参加したことがある選手は、初めてNUDに参加した選手に比べて、他民族に対する感情障壁が低く、他民族に対する信頼度が高いことが統計的に示されました。また、NUD終了後も、選手たちはNUDでの体験や平和の大切さを友人や家族、地域社会で話したり、ラジオなどを通じてメッセージを広めたりするなど、平和大使としての活動を継続していることがわかりました。
選手たちがNUDで築いた友情、信頼、社会的ネットワークを維持し、地域に戻った後もその効果をコミュニティに蓄積しようとしていることも明らかです。このことは、NUDによる効果が一時的なものではなく、NUD後も維持・持続されることを示唆しています。
本稿でNUDの効果の持続性が確認されたことから、スポーツイベントを平和構築の取り組みのツールとして捉え、南スーダンの社会的結束力を高めるために、NUDを継続して開催することが重要と考えられます。
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