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海洋資源保護と経済成長の両立を目指す、フィリピンの「ブルーエコノミー」推進に向けた調査報告書が公開されました!

#1 貧困をなくそう
SDGs
#14 海の豊かさを守ろう
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2026.04.30

JICAでは、2025年6月から2026年2月までの期間、フィリピンにおいて「ブルーエコノミー推進に向けた情報収集・確認調査」を実施しました。

調査報告書はこちら

ブルーエコノミーとは?

「ブルーエコノミー」とは、海や沿岸の資源を守りながら、それらを活用して経済や暮らしを豊かにしていく考え方です。漁業や海上輸送、観光、金融など、海と関わるさまざまな産業を、環境に配慮しつつ持続的に発展させることを目指しています。
日本においても、ブルーカーボン※1の活用や、環境に配慮した港づくり、持続可能な水産業への転換など、ブルーエコノミーの考え方に沿った取り組みが官民一体で進められています。

※1ブルーカーボン:マングローブや海草藻場、干潟などの沿岸・海洋生態系が吸収・貯留する二酸化炭素由来の炭素のこと。気候変動対策に貢献するとともに、生物多様性の保全や漁業資源の回復にもつながることから、近年注目されています。

フィリピンにおけるブルーエコノミーの重要性

フィリピンは7,600以上の島々から成る群島国家であり、漁業・水産業、海上輸送、海運・造船といった海洋関連産業は、同国の経済と人々の暮らしを支える重要な産業です。その一方で、魚の乱獲や海洋環境の悪化、流通過程での品質低下によるポストハーベストロス※2、船舶などからの温室効果ガス排出の増加といった課題も見られ、海を将来にわたって活かしていくための対応が求められています。

※2ポストハーベストロス:収穫(漁獲)後から消費者の手に届くまでの間に、保管・輸送・加工・流通の各過程で発生する品質劣化や腐敗、破損等による損失のこと。水産分野では、冷蔵・冷凍設備の不足や衛生管理の不十分さなどにより、食用可能であった魚が廃棄されるケースが問題となっています。

このような流れの中で、「ブルーエコノミー」はフィリピン政府においても重要な政策分野として位置付けられています。現在、ブルーエコノミーを国として総合的に進めるための「ブルーエコノミー法案」の採択に向けた検討が進められており、関係省庁の連携強化や、民間投資を促すための制度づくりが期待されています。

こうした状況を踏まえ、本調査はフィリピンにおけるブルーエコノミーに関する政策や制度の状況、実際の取り組み体制、民間企業の動向などを整理し、今後JICAとしてどのような協力が可能かを検討することを目的として実施しました。

調査内容

調査では、水産、海上輸送、金融の3つの分野を中心に、国の政策や制度、関係機関の役割分担、現在行われている取り組みについて情報収集と分析を行いました。具体的には、水産分野では資源管理や流通の改善、海上輸送分野では環境への負荷を抑えた船舶や港のあり方、金融分野では海洋分野への投資を後押しする仕組みなどについて整理しました。また、地方自治体や研究機関、他ドナー等のヒアリングを通じて、地域ごとの課題や現場の声も把握しました。

さらに、ブルーエコノミーは民間企業の役割が大きい分野であることから、日・比の民間企業20社以上へのヒアリングを実施し、事業を進める上での課題や、将来のビジネス機会、官民連携への期待について整理しました。

調査を通じて得られた示唆

本調査を通じて、フィリピンにおけるブルーエコノミーの推進には、水産分野での資源管理と付加価値向上、海上輸送分野での環境対応やインフラ整備、ブルーカーボンクレジット※3等金融分野でのブルーエコノミー推進に向けた資金の流れづくりといった分野ごとの取り組みを着実に進めることが重要であることが確認されました。同時に、これらの分野を別々に進めるのではなく、相互に繋げながら進めることで、より大きな効果を生み出せる可能性が高いことも見込まれています。そのためには、関係省庁が横断的に連携する仕組みづくりや、民間企業との協力を一層進めることが鍵となります。

※3ブルーカーボンクレジット:マングローブ林・海草藻場・干潟などの沿岸・海洋生態系が、二酸化炭素(CO₂)を吸収・貯留する効果を「価値」として数値化し、クレジット(取引可能な証書)として扱う仕組み。

フィリピンの更なるブルーエコノミー推進に向けて

今後、JICAは本調査の結果を踏まえ、今後もフィリピンにおけるブルーエコノミー分野の強化・発展に貢献すべく、フィリピン政府と継続的に協議を重ねていく予定です。フィリピン政府のニーズや日本の経験・技術を活かしながら、官民連携や地域をまたいだ取り組みも視野に入れ、フィリピンにおける持続可能で、誰もが恩恵を受けられるブルーエコノミーの実現に向けた協力を検討していきます。

漁港での水揚げの様子

フィリピンの漁業者の貧困率は27.4%(PSA、2023年)と主要セクターの中でも高い水準にあり、近年は気候変動の影響によって自然環境や生計手段が不安定化する中で、一層厳しい状況に直面しています。
海洋資源を持続的に利用するための適切な管理を進めるとともに、漁獲後の流通段階におけるロスを削減し、限られた資源をより有効に活用していくことが重要です。

海藻養殖の様子

フィリピン南部ミンダナオ島西部に位置するバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(Bangsamoro Autonomous Region in Muslim Mindanao:BARMM)は、フィリピンにおける海藻の一大産地です。歴史的に自治権をめぐるイスラム系住民と中央政府との緊張関係、ならびに地域の有力勢力間の衝突が重なり、長年にわたり不安定な状況が続いてきたBARMMにおいては、紛争後の持続的な平和構築と地域の安定に向けて、海藻産業の強化や加工等の付加価値化を通じた生計向上と雇用創出が課題となっています。

関連リンク: 水産ブルーエコノミー振興 | 事業について - JICA

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