北岡理事長がモロッコ及びフランスを訪問:仏国際関係研究所主催の「世界政策会議」に登壇した他、関係要人と面談

2017年11月9日

WPCで発言する北岡理事長(中央)

北岡伸一JICA理事長は、11月3日から7日にかけてモロッコ及びフランスを訪問し、仏国際関係研究所(IFRI)主催の「第10回世界政策会議(World Policy Conference:WPC)」に登壇するとともに、両国で関係要人と面談しました。

WPCは、仏有数のシンクタンクであるIFRIの理事長を務めるティエリ・ドゥ・モンブリアル氏が設立した、その時々の世界的な政策課題・時事問題について各国の要人・専門家等が議論する国際的なフォーラムです。2008年の第1回以来毎年開催されており、10回目となる本年は、モロッコのマラケシュで開催されました。

11月3日、WPCに参加した北岡理事長は、「アフリカにおける投資」をテーマとしたセッションで、フランス開発庁(AFD)のレミー・リュウ総裁、ドイツ国際協力公社(GIZ)のクリストフ・ベイアー副議長、モロッコ王立リン鉱石公社(OCP)グループのモスタファ・テラブ会長兼CEO、モロッコ経団連(CGEM)のミリアム・ベンサラー・シャクルン会長と共に登壇しました。

同セッションでは、冒頭、アフリカには、今後の人口増加を考えると大きなビジネスチャンスがあると同時に、経済発展が遅れれば貧困や社会不安の深刻化等のリスクがあるとの問題提起がありました。そうしたリスクを現実のものにしないためには、資源依存からの脱却が大きな課題であり、資源開発投資への集中から、農業、製造業、サービス業への投資分野の多様化が必要であること、他方で最近は紛争の局地化やビジネス環境の改善が見られる点につき参加者間で認識の一致がありました。各開発援助機関の参加者からは、それぞれがアフリカに民間投資を誘引すべく、投資環境整備、インフラ開発、人的資本育成を支援していることが述べられました。

北岡理事長は、ケニアで開催したTICAD VIでのアフリカの強いオーナーシップに言及しつつ、1つ目の課題として食糧供給確保による物価、賃金の安定を挙げ、最近のセネガルの事例に触れつつ、CARD(アフリカ稲作振興のための共同体)を立ち上げ、アフリカのコメ生産を2008年からの10年間で倍増する支援をしてきたことに言及しました。2つ目の課題として人的資本育成を挙げ、JICAは、国民皆保険制度、母子健康手帳や学校給食を通じた子どもの栄養改善といった日本や東南アジアでの開発経験を踏まえつつ、1.UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)(注1)の普及、2.農業・食糧に加え保健・教育など他分野に渡って栄養改善に取り組むIFNA(食と栄養のアフリカ・イニシアチブ)などに取り組んでいることを紹介しました。

さらに、3つ目の課題として民間投資促進を取り上げ、インフラ開発と並んで日本の中小企業のアフリカへの関心を高め、JICAボランティアも巻き込んで中小企業が持つ革新的なアイデアをアフリカの開発に繋げる試みを行っていることを紹介したほか、ABEイニシアティブ(注2)で日本に留学したアフリカの学生が日本での経験を踏まえ産業化の推進役となることも期待されると述べました。また、JICAのアフリカ支援の成功例として、モロッコへの協力にも言及しました。

このほか北岡理事長は、ベイアーGIZ副議長、テラブOCPグループ会長兼CEOや、メスカル・モロッコ国際協力庁(AMCI)長官(大使)と面談し、今後強化していく連携分野(GIZ)や農業分野でのアフリカ向け支援の在り方(OCP)、JICAがモロッコと実施している南南・三角協力(注3)の強化・推進等(AMCI)について意見交換した他、ABEイニシアティブで日本へ留学したモロッコ人帰国生や、JICAボランティアとの懇談を行いました。

ゴルニツカDAC議長と北岡理事長

リュウAFD総裁と北岡理事長

5日から訪問したフランスでは、北岡理事長は、河野正道経済開発協力機構(OECD)事務次長やシャルロット・ゴルニツカ開発援助委員会(DAC)議長と面談し、国際関係が変容する中でのOECD/DACの今後の方向性や役割について意見交換を行いました。また、リュウAFD総裁およびグレゴリー・クレモント海外経済協力振興会社(Proparco)社長とも面談し、今後の更なる連携強化を確認するとともに、サスティナビリティ/気候変動分野での協力や、開発における民間セクターとの連携の重要性について意見交換を行いました。

このほかIFRIで開催された討論会にて、北岡理事長は「日本の開発途上国へのアプローチ〜積極的平和主義について」をテーマに日本、JICAの開発援助の考え方や方向性について、歴史的背景を紐解きつつ紹介。参加したフランスの有識者から、開発を取り巻く国際関係の変容やアフリカにおける日仏の効果的な連携について意見が述べられる等、活発な討論が行われました。

IFRI討論会で発言する北岡理事長

JICAは、開発における国際的な潮流において様々なパートナーと連携し、グローバルな開発課題の解決に貢献します。

注1:UHCとは、すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられること。

注2:ABEイニシアティブとは、アフリカの若手の 行政官、起業家・企業人などを留学生(修士課程)として日本に受入れ、日本企業の水先案内人を育成する事業。

注3:三角協力とは、開発が比較的進んでいる途上国が、自国の開発経験や人材などを活用して他の途上国に対して援助を実施する取り組み(南南協力)を、日本など先進国が支援する協力形態。

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