アフリカの経済成長、持続可能な開発と日本企業の役割

アフリカにおける民間投資は増加しており、民間資金の投入はODAのそれを大幅に上回る。また、近年の資源価格の低迷はあるものの高い経済成長を維持するアフリカ諸国も多く、日本企業の関心は高い。JICAでは、ビジネス環境整備などの民間セクター開発支援を通じ、日本企業のアフリカ進出を側面支援しているが、日本企業の進出は、アフリカにおける貿易・投資の促進、雇用創出、人材育成や所得向上等アフリカの持続的経済成長の促進に繋がるものである。また日本企業の持つ先進技術や製品は、栄養不良、感染症の蔓延、廃棄物などによる環境汚染、電力へのアクセスなど、アフリカの抱える開発課題の解決及び持続可能な開発目標の達成に貢献することが期待されている。

JICAでは、このような進んだ技術や製品を持つ民間企業とのパートナーシップ関係を強化し、協働してアフリカの抱える課題解決に取り組み、アフリカ諸国・民間企業・ODAが「Win-Win-Win」の関係となることを目指している。

【画像】「開発課題」の解決に向け、「Win-Win-Win」の事業を展開

持続可能な開発のための2030アジェンダ

2015年、「国連持続可能な開発サミット」において、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、17の目標と169のターゲットから構成される「持続可能な開発目標(SDGs)」が設定された。SDGsの達成には、あらゆるステークホルダーの参加が不可欠であり、日本企業の技術やノウハウは、これらの課題解決に貢献する高い可能性を持っている。

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JICAによる民間連携事業メニュー

日本企業の力をアフリカ各国の開発課題の解決に生かし、アフリカのよりよい社会を実現するため、JICAでは、海外展開を目指す日本企業への幅広い支援メニューを提供している。((注)は中小企業のみ対象)

現地で情報収集や調査をしたい

基礎調査(注)

対象国は決まっているが、現地での情報収集が進んでいない企業向け。
途上国での事業展開に必要な基本情報の収集、事業計画の立案を支援。
【事業経費・期間:1件850万円を上限/1年間】

案件化調査(注)

対象国での情報収集が進んでおり、ODA事業への参加をきっかけに自社の製品や技術で海外進出したい企業向け。
事業計画の策定、現地ネットワークの構築などを支援。
【事業経費・期間:1件3,000又は5,000万円(機材の輸送が必要な場合)を上限/1年間】

協力準備調査 BOPビジネス連携促進

途上国の貧困層を対象とした事業(BOPビジネス)を展開したい企業向け。
ビジネスモデルの策定や事業計画の立案を支援。
【事業経費・期間:1件5,000万円を上限/最大3年間】

現地で自社の製品や技術を普及したい

普及・実証事業(注)

対象国での情報収集が進んでおり、自社の技術や製品を実際に途上国で実証し、普及させようとしている企業向け。
途上国の政府関係機関等に対する普及・実証を支援。
【事業経費・期間:1件1億円を上限/1〜3年間】

民間技術普及促進事業

対象国の開発に資する製品、技術、インフラなどを有しており、それらを現地にアピールしたい企業向け。
国内での視察や技術指導、現地でのセミナー開催などを支援。
【事業経費・期間:1件2,000万円を上限/最大2年間】

海外展開に向けて社員を育成したい

民間連携ボランティア制度

アフリカ各国でのボランティア経験を通じてグローバルな感性を持つ人材を育成し、現地のネットワークを構築したい企業向け。
企業のニーズを踏まえて、JICAボランティアの派遣国や職種、期間をカスタマイズする。

現地の情報収集・人脈形成・パートナーを見つけたい

ABEイニシアティブ

アフリカの若者を受入れ、日本の大学での修士号取得と日本企業でのインターンシップを行うプログラム。
企業登録をすると、研修員プロフィールにアクセスができ、来日中の研修員に直接コンタクトし、情報交換や意見交換を行うことが可能。

アフリカの開発課題解決に、アフリカのパートナーとともに挑む、日本企業の取り組み

ガーナ、ウガンダ、ケニア、ナイジェリア、モロッコ、南アフリカにおいて活動を展開する5つの企業を紹介。

味の素株式会社(東京都)

ガーナにおいて、保健省とともに。
(BOPビジネス連携促進)

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開発課題

現地の食事(伝統的な発酵コーンを用いたお粥)は、エネルギー、タンパク質、微量栄養素が不足しており、乳幼児の栄養不足が大きな問題となっている。特に生後6ヵ月から24ヵ月の離乳期の栄養不足による成長不良(低身長、低体重)が深刻な問題となっている。

民間企業の技術提案

提案企業のもつ食とアミノ酸の知見と技術を生かし、乳幼児の栄養改善に貢献できる食品を開発し、現地生産を立ち上げるとともに、BOP層に製品を届けるビジネスモデルの構築を目指す。

期待される成果

  • 対象地域の低体重、低身長などの子どもの成長の遅れが改善されるとともに、BOP層の生活向上に貢献することが期待される。
  • 大豆等の現地原料を活用した現地生産を行うことで、農業の促進、現地企業の能力向上、雇用の創出が期待される。

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開発した食品KOKO Plusを混ぜたお粥を食べる様子

サラヤ株式会社(大阪府)

ウガンダにおいて、保健省とともに。
(BOPビジネス連携促進/普及・実証事業)

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開発課題

5歳未満児の死亡要因は感染性疾患が起因するケースが多く、保健・医療分野における感染対策の重要性が唱えられている中で、保健サービスの向上が急務。医療機器の衛生状況も劣悪で、また水道のインフラ整備も行き届かず手洗い等が徹底されていないため、院内感染による死亡事故も多数報告されている。

民間企業の技術提案

  • 現地生産による安価かつ幅広いウイルスや菌に効果のあるアルコール手指消毒剤の生産・販売を通じ、院内感染対策に寄与。
  • 5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)活動を行うJICA青年海外協力隊との協力関係を基に、手指衛生インストラクター制度の導入を行いながらアルコール手指消毒剤の普及を図る。
  • パイロット病院において全自動医療器具洗浄消毒器を導入し、医療器具の不十分な洗浄・消毒に起因する院内感染の防止を試験的に実施する。

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消毒剤で手を消毒する様子

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全自動医療器具洗浄消毒器

期待される成果

  • 対象地域の低体重、低身長などの子どもの成長の遅れが改善されるとともに、BOP層の生活向上に貢献することが期待される。
  • 大豆等の現地原料を活用した現地生産を行うことで、農業の促進、現地企業の能力向上、雇用の創出が期待される。

株式会社和郷(千葉県)

ケニアにおいて、ジョモ・ケニヤッタ農工大学とともに。
(案件化調査/普及・実証事業)

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開発課題

ケニアでは、農業セクターが国内総生産3割を占め、同セクターに人口の7割が従事しているが、農作物の品質が不安定であり、付加価値をつける工夫に乏しいため販売単価が低く、また供給量が不安定なため、現地園芸農家が十分な収入を得られていない状況にある。

民間企業の技術提案

市場のニーズにマッチした高付加価値農作物栽培のため、簡易土壌分析や生産履歴の記帳によるトレーサビリティーの確立などによる「品質管理の徹底」、施設栽培や商品開発の普及による「付加価値の向上」などをケニアの現地園芸農家などに導入し、現地園芸農家の「自立」を目指す。

期待される成果

現地園芸セクターに適用可能な高付加価値果菜類の商品開発プロセスと果菜類の施設栽培管理ノウハウが現地関係者や現地園芸農家グループに対し提示・普及されることが期待される。

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日東建設株式会社(北海道)

ナイジェリアにおいて、公共事業省とともに。
(普及・実証事業)

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開発課題

内国交通の90%以上が道路交通に依存しているが、道路状況は悪く(舗装道路の30%、未舗装道路の70%は管理が不十分)、適切な維持管理が求められている。

民間企業の技術提案

非破壊によるコンクリートの圧縮強度推定装置(コンクリートテスター:CTS)は、ハンマーでコンクリートを打撃した際に生じる打撃力の時間波形を測定及び解析し、表面の劣化の簡易診断、高精度な圧縮強度測定が可能。公共事業省の技術者とともにC T Sを使用しアブジャ市内の道路橋梁の点検を実施点検結果に基づいた維持管理計画を作成。現地土木技術者を対象とした道路橋梁維持管理セミナーを開催。

期待される成果

公共事業省の技術者のCTSを使用した道路橋梁点検技術及び維持管理計画作成能力の向上及びより適切かつ計画的な道路橋梁維持管理の実施。

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公共事業省技術者との点検実習

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現地土木技術を対象としたセミナーでの実演デモ

株式会社鳥取再資源化研究所(鳥取県)

モロッコにおいて、スス・マッサ地域農業開発公団とともに。
(普及・実証事業)

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開発課題

慢性的な水不足による地下水の低下を背景とした農業用水コスト上昇と水資源枯渇リスクへの対応が重要な課題。節水型農業技術として点滴灌漑は普及しつつあるが地下水位の低下は止まらず、更なる節水技術が求められている。

民間企業の技術提案

廃ガラスを原材料とする多孔質素材を土壌改良材として利用することで土壌の保水性を高め、灌水量の大幅減を目指す技術。深刻な水不足に見舞われている地域で、節水効果と安全性を実証し、普及を目指す。

期待される成果

モロッコが抱える慢性的な水不足によって上昇する農業用水コストの削減と同時に、収量増加による所得向上及び気候変動による少雨化に適応した農業の持続可能性向上が期待される。

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株式会社CFP(広島県)

南アフリカにおいて、ケープタウン市公共サービス部門とともに。
(普及・実証事業)

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開発課題

経済発展により人々の暮らしが豊かになる一方、廃棄物投棄量が増加している。中でも投棄された廃プラスチックは自然に分解されず将来に亘って環境にとどまることから、環境問題の原因一つとなっている。廃プラスチックのリサイクル率は18%と低く、喫緊の対策が求められている。

民間企業の技術提案

汚れが付着した廃プラスチックを、プラスチック素材(PE/PP/PS)の分別をすることなく効率的にリサイクル油にすることができる油化装置。従来技術では約10℃以下で生成油が固化していたが、特許技術(申請中)により0℃以下の低温でも固化しない生成油の製造が可能であり、生成した油はディーゼル発電機やボイラー用の燃料として利用することができる。

期待される成果

廃棄物処理場に直接投棄されていた廃プラスチックを削減し、リサイクル率向上および石油燃料の使用削減が期待される。

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廃プラスチックから生成された油を取り出す様子