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2025年度・JICA関西教師海外研修 ペルー研修現地レポート 【後編】

JICA関西は、関西2府4県の教職員を対象に、教師海外研修を実施しています。教師海外研修は、教職員の方々が実際に開発途上国を訪問し、国際協力の現場や開発途上国の現状・課題、日本との関係について理解を深め、その成果を、学校現場での授業等を通じて次代を担う児童・生徒の教育に役立ててもらうことを目的としています。研修は1年間かけて実施され、海外研修を中心に、日本国内で実施する事前研修・事後研修、そして海外研修経験に基づき帰国後に参加者の所属校で行われる授業実践で構成されます。
 2025年度は、2023年度・2024年度に引き続き、南米・ペルー共和国を研修国として実施しました。12名の先生方が2025年8月に参加した海外研修の様子を現地レポートとして3回(前編・中編・後編)に分けてお届けします。(前編は こちら ・中編は こちら
下記の4コマレポートと併せてどうぞご覧ください!

2025年8月15日(金)パラカス自然保護区、パラカス博物館訪問

リマを早朝に出発し、バスで5時間ほどかけてイカ州のパラカス自然保護区へ向かいました。パラカスは1975年に自然保護区として政府が制定、今年9月で50周年を迎えます。「自然の楽園」と言われるほど生物多様性に富んだ場所で、生物多様性の保護及び管理のため、環境省管轄の国立自然保護区管理事務局(SERNANP、セルナンプ)の職員やボランティアが働いています。また、1992年にはペルーで初めて国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録され、保護区内では、216種類の鳥類、36種類の哺乳類、10種類の爬虫類、168種類の魚類、317種類の藻類、54種類の陸上植物が共存しているとレンジャーから説明を受けました。
自然保護区内に入ると、広大な砂漠が目の前に広がっており、首都リマとの大きな違いを目の当たりにしました。
パラカス博物館では、インカ以前の紀元前700年から紀元後200年の間にイカ州ピスコ郡パラカスで発展した「パラカス文化」について学ぶことができました。常設展示室では、陶磁器、織物、ミイラ等、ナスカとパラカス湾での出土品が展示されていました。古代ペルーでは、穿頭術(トレパネーション、頭蓋骨に穴を開ける外科手術)が数多く行われており、成功率も高かったという話には、ただただ驚かされました。
企画展示室では、JICA海外協力隊として活躍中の山本粧子さん(職種:青少年活動)による「山本粧子展」と題された山本さんのアート展と山本さんが来場者のスピード似顔絵を描くワークが開催されており、アート展の見学とともに山本さんの活動についてお話を伺いました。さらに国際女性デーに合わせて山本さんが作成した、ペルーの女性偉人をカード合わせゲーム方式で楽しく学べるワークショップも体験させていただきました。
(啓明学院中学校・高等学校 谷本 百合香 先生)

自然保護区にて

山本隊員のワークショップ

2025年8月16日(土)リマ歴史地区(旧市街)とインカ・マーケット

早朝、パラカスを離れ、リマに戻ってリマ市内の旧市街地を視察しました。移動中、通訳のフランクさんが日本とペルーで育ったご自身の生い立ちを語ってくれました。旧市街地では日本語ガイドのヤスムラさんに案内していただきました。これまで見てきたペルーの街並みとは異なり、ヨーロッパ調の建物が立ち並ぶ光景は印象的でした。中でも中心地のカテドラル(大聖堂)と旧フランシスコ・ピサロ邸(現大統領府)は圧巻で、建物を眺めながらペルー国旗の紋章やスペイン植民地時代の歴史について説明を受けました。紋章のある国旗には、ペルーの三地域(山岳地帯、熱帯雨林地帯、海岸地帯)を象徴する図柄が描かれており、政府関連の建物に掲げられています。アンデス地域を象徴するビクーニャ(アルパカの仲間)、アマゾン地域を象徴するキナの木、そして砂漠の沿岸地域を示す豊穣の角から溢れだす金貨です。
その後、サンフランシスコ教会とカテドラルを見学し、インカ・マーケット(市場)へ移動しました。市場には民族衣装や伝統楽器などが並んでおり、帰国後の授業実践に向けて教材を集めました。さらに偶然、現地で活動するJICA海外協力隊2名と出会い、ペルーでの暮らしや活動内容について貴重な話を伺うことができました。
今日の研修で最も印象に残ったのは、ヤスムラさんの「僕はペルーに住む地球人です」という言葉です。今回の研修で日系社会を学ぶ私たちにとって、この言葉は非常に心に響くものでした。
(大阪府立豊中高等学校能勢分校  田中 翔一郎 先生)

大統領府にて

インカ・マーケットで教材収集

2025年8月17日(日)研修の振り返り、同行通訳フランクさんのご自宅訪問

最終日ということで、この日は研修の振り返りを行いました。まずは参加者から印象に残ったことをそれぞれ出し合いましたが、ペルーで過ごした一週間の出来事はどれも刺激的で、選ぶことがとても難しかったです。それでも、振り返りを進める中で、それぞれにとって一番印象に残ったことが何なのか、焦点を明確化させることができ、これから学校で子どもたちに伝えたいことが見えてきたように思います。そして、振り返りの最後には、それぞれの学校での授業計画についても話し合いました。自分一人では思いつかなかったり、悩んでいたりすることも、参加者に様々な校種の先生がいることで、様々な角度からヒントをもらうことができました。この時間で考えたことを、授業実践に生かしていきたいです。
 振り返りの後は、これまでこの研修に通訳として同行くださっていたフランクさんの案内のもと、近くの市場で食材を調達、フランクさんのご自宅でペルー料理の作り方を教えていただきました。町の様子やそこに住む人々の生活の一部を見ることができ、より多くの視点でペルーという国のことを知ることができました。ペルーでの最後のプログラムということで、みんなそれぞれ強い思いをもってこの時間を過ごしたのではないかと思います。
(西宮市立安井小学校 福田 優那 先生)

振り返りの様子

ペルー料理を体験

帰国後の授業実践について

参加者の先生方は、帰国後、9月から11月にかけて、ペルーでの学びを活かした授業を実践しました。授業実践のテーマは、「せかいの人たちとなかよし大作戦!」「日本とペルーの防災意識から見える文化の違い」「多様性と団結の言語スペイン語から考える多文化共生」など、多種多様です。年度末には、授業の指導案等の詳細を含む研修報告書をJICA関西教師海外研修のウェブサイトに掲載します。ぜひご覧ください。