【草の根技術協力(終了報告)】図書で広がる学び~「ラオスのこども」が取り組んだ教育改善事業の成果~
2026.06.17
特定非営利活動法人ラオスのこども(以下、ALC)は、2023年5月より、JICA草の根技術協力事業「中等学校における学校図書室の役割拡充を通した教育改善事業」(以下、本事業)を実施しました。口承文化の伝統が強く、文字を使った情報へのアクセスが限られてきたラオスでは、多くの地域で書店や図書館、学校図書室はありません。そのため、「図書」を通じて、子どもたちが文字に親しむ機会が限られています。このような環境下で生じる子どもたちの文字習得の遅れは、学校での学習を一層困難にし、子どもたちにとって学習の継続や理解に影響を及ぼす課題となっています。
こうした課題に対し、ALCは学校図書室を通じた教育改善活動を展開し、子どもたちがより多くの情報に触れ、主体的に考えることができる授業の質改善をサポートしてきました。
本事業の対象中等学校のひとつ
対象校の生徒たち(サナカム中・図書室ボランティア)
◆関連リンク:
・ラオスのこども HP:ラオスのこども (Action with Lao Children) (deknoylao.net)
・ラオスのこども Facebookアカウント(活動の様子を随時更新中!):Action with Lao Children ラオスのこども | Facebook
本事業では、首都から車で3~5時間のところに位置するヴィエンチャン県において、8つの中等学校を対象に展開しました。事業対象地周辺は農村部に位置し、ラオスの公用語「ラオス語」を使用しない少数民族の生徒が多く通う学校もあります。対象校はいずれも、本事業で初めて図書室を開設する学校や図書室があっても活用されていない学校でした。本事業の初期段階では、研修を通じて、まずは皆が利用しやすい図書室の環境整備に注力。教員や生徒は、図書の分類・整理や貸出方法、来館者が手に取りやすい図書の配置、展示方法といった図書室運営を学び、教員は図書を活用した授業の計画とその実践に少しずつ取り組んでいきました。
図書室で試験前に勉強する生徒たち
学校図書室の様子
図書を活用した授業(ムーン郡ナムホーン中・公民教育)
図書を活用した授業(サナカム郡センチャルン中・国語)
その結果、図書を活用した授業の実践報告は100件以上にのぼり、教員からは「図書を活用した授業は、生徒が退屈せず学習に関心を持ちやすい」、「生徒の理解が促進される」、「楽しみながら良い雰囲気で学習できる」といった効果を実感したとの意見が多く寄せられました。そして何よりも、その授業を受けた生徒の7割超が「教科書中心の授業と比較して良く理解出来た」と回答し、教科書からだけでは得られない新しい情報に触れ、子どもたち自身の学習への関心や意欲の向上が見られました。さらに、グループ活動では「友だちと意見を出し合うことで、自分も発言できるようになった」「自分の意見を表現出来楽しかった」といった声も多く挙げられました。授業後に図書室を再訪し、授業で使用した図書を継続して読んだり、他の図書にも関心を広げたりする生徒が多く確認され、主体的な学習行動の促進につながりました。
本事業の後半では、授業の一環として生徒が生まれ育った地域の歴史や文化を自分たちで調べ、それを記録し、図書資料として活用していく取り組み‐「地域学習」が行われました。学校によってテーマはさまざま。生徒たちは自分たちの地域に伝わる昔話を絵本にしたり、地元の名所を観光ガイドブックにしたり、地元の洪水被害の歴史からハザードマップの制作などに取り組みました。これらの制作活動の過程では、生徒たちが学校の外に出て、現地を訪ねたり、住民の方々に聴き取りを行いました。実際に現地で収集した情報をもとに、写真や動画・音声記録を駆使しながら、グループごとに協力して成果物をつくりました。
地域学習におけるグループ活動(校区の歴史年表づくり)
地元住民へのインタビュー調査(モン族の刺繍文様)
このようなアクティブラーニングの要素を含んだ活動は、日本で重視される授業改善の視点「主体的・対話的で深い学び」とも重なり、ラオスの生徒たちの記憶に深く残る経験となりました。収集した情報の整理・まとめ、成果物の制作・発表といった実践活動では、まさに人とコミュニケーションを取りながら自ら考え、さまざまな力を発揮し、成長する姿が見られたと言えます。また、教員自身も、生徒がグループで助け合う協調性を身につけ、自分たちが制作した成果物を発表する表現力が身についたと感じてくれていました。
住民の方々を招いて地域学習の披露
成果物の発表(地元の山のドキュメンタリー)
また、本事業では、学校が地域住民と一緒に学校図書室運営をサポートする体制を構築してきました。事業期間を通じた普及イベントを通じて地域における学校図書室の認知度も高まり、「地域学習」の実践においても、地元住民から多くの協力を得ることが出来ました。生徒たちによる成果物の発表を聞いた住民もまた、生徒が地域の歴史や文化に関心を持つことを喜び、コミュニティが一体となって図書の重要性を理解し、子どもたちの教育に対する関心を高めることにつながりました。
◆本事業概要はこちら:PowerPoint プレゼンテーション
、事業提案書要約
◆これまでの活動の様子はこちら:
・ラオスの学校で図書室づくり~本の見せ方を工夫して、もっと魅力的で活用される図書室を!~ | 日本国内での取り組み - JICA
・\ラオス・草の根活動レポート/中等学校で「地域学習」に挑戦!ラオスの中高生たちが活動を通して学んだこととは…? | 日本国内での取り組み - JICA
学校図書室を「読書の場」から「学習・情報センター」として発展させ、行政・学校・地域が一体となって、子どもたちが社会で必要とされる力を育むための教育改善に取り組んだ本事業では、図書を活用する教育の有用性を教員自身が理解し、生徒の「21世紀スキル(思考力、問題解決力、コミュニケーション力、協働性等)」の授業の質改善に貢献しました。今後は、本事業を通じて理解を深めた県や郡の教育スポーツ局職員や教員が「図書」を通じた教育活動の中で活躍し、子どもたちの新たな経験をサポートしてくれることを期待しています。
最後に本事業の実施団体・ALC様からのメッセージをご紹介します。
事業終了が近づいた頃、授業で積極的に図書を活用している教員たちにその理由を尋ねると、「教科書は定義が中心だが、図書を使うと内容をより深めることができる」「教えやすさがまったく違う」「生徒たちからも、次はいつ図書室で授業をするのかと楽しみにされている」といった声が、次々に返ってきました。教員自身が確かな手ごたえを感じ、自信をもって取り組んでいる姿を見て、事業が終了した後も、この活動はそれぞれの学校で継続していくだろうと感じ、嬉しく思いました。
ヴィエンチャン県教育スポーツ局では、県立図書館や郡教育スポーツ局と連携し、この取り組みを引き続き県内で展開していこうとしています。また、学校図書室オープンデーや地域学習の場で、生徒の発表を温かく見守っていた地域住民の方々も、図書室運営を支える大切な存在となっています。
教育の改善は、短期間で成果が現れるものではなく、長い時間を要しますが、このプロジェクトにより蒔かれた種が、芽吹き始めていることを実感しました。今後、この芽が行政・学校・地域コミュニティなどの人々の手により育まれ、やがて豊かな実を結ぶことを願っています。
◆本事業の終了時報告書はこちらから:事業評価報告
および別添資料
(掲載元:草の根パートナー型 | 事業について - JICA)