田中理事長がザンビアを訪問
2024.06.21
田中明彦JICA理事長は、6月1日から6月6日にかけてザンビア共和国を初めて訪れました。同国のハカインデ・ヒチレマ大統領、シトゥンベコ・ムソコトワネ財務・国家計画大臣をはじめとする政府要人との会談や、ザンビア大学にて日本・ザンビア外交関係樹立60周年を記念するJICA日本研究講座設立支援事業(JICAチェア)特別講義を行ったほか、JICAの協力事業の視察等を行いました。
田中理事長はヒチレマ大統領との面談で、1964年の外交関係樹立以来、二国間関係が着実に強化されていることを喜び、特に農業、インフラ、保健、教育等の分野での更なる協力の意向を示しました。また、ザンビアで現在深刻な課題となっている干ばつ被害へのお見舞いとともに、干ばつ下における食糧危機対策において、これまでJICAがザンビアで協力してきた「地域密着型小規模灌漑(COBSI)」【注1】が有効な取り組みであると言及しました。
ヒチレマ大統領からは、日本の協力で整備された「Tokyo Way」【注2】沿いに住んでいたというエピソードの紹介を含め、JICAの長年の協力への謝意を示すとともに、干ばつ対策への協力やインフラ整備支援など、各分野における更なる協力への期待を述べました。
面談にはマセボ保健大臣、ピリ農業大臣、ミトワ情報・メディア大臣も同席し、それぞれの分野でのJICA協力への謝意と今後への期待を述べました。中でもピリ農業大臣からは、前述のCOBSIを農業省として強く進めていきたい旨の表明がありました。
本面談の様子は、大統領の公式Facebook上でライブ中継され、多くのザンビア国民が視聴しました(視聴回数約2.7万回)。
【注1】COBSI(Community-based Smallholder Irrigation):天水に頼る小規模農家が乾期でも栽培できるよう、現地で入手可能な自然資材(木・土・石等)を用いて簡易堰を作って川から水を引くことから始め、水管理や堰の維持管理を通じて農家グループの組織強化を図り、更に市場志向型農業(SHEP)や栄養改善の活動を取り入れることで、小規模農家の包括的レジリエンス強化を目的としたアプローチ。
【注2】Tokyo Way:無償資金協力(2011~2014)によってルサカ市南部の道路約15 kmの改修を行ったもの。2015年にルサカ市議会によって事業対象区間の名称が「Tokyo way」に決定され、以降ザンビアの人々に同名称で親しまれている。
ヒチレマ大統領との面談
また、田中理事長は、シトゥンベコ・ムソコトワネ財務・国家計画大臣とも面談を行いました。
ムソコトワネ大臣は、科学技術、保健、農業(特に灌漑)分野等で日本が多大な協力を行っていることに対し心から感謝するとともに、ザンビア政府の債務再編が順調に進んでいることに触れ、日本の官民による更なる投資への期待を述べました。
田中理事長からは、債務再編に向けたザンビア政府の努力に敬意を表するともに、JICAは投資環境整備としてのインフラ協力や、雇用機会創出のための農業や中小企業への支援に今後も精力的に取り組んでいきたい旨を伝えました。
ムソコトワネ財務・国家計画大臣との面談
さらに、田中理事長はザンビア大学(University of Zambia、以降、通称「UNZA」)にて日本・ザンビア外交関係樹立60周年を記念して開催されたJICAチェアにて特別講義を行いました。UNZAの教員や学生、さらにザンビア政府のJICA帰国研修員ら約250名の聴衆が集いました。
冒頭、UNZA学長は、1980年代のUNZA獣医学部設立当初から、無償資金協力や技術協力を中心に、JICAと40年に亘る協力が続いていることに強い感謝の意を表するとともに、今後の協力関係継続・強化についての期待を述べました。
田中理事長は、新型コロナ感染症やコレラを始めとする感染症、干ばつによる食糧不足や電力不足、2020年のデフォルトからの債務健全化、銅に依存する単一経済から産業多角化による雇用創出等の諸課題を抱え、複合危機に直面するザンビアの文脈を踏まえつつ、「日本の視点から見た複合危機下における国際関係」という題目で講義を行いました。聴衆からは国際関係や開発に関する様々な質問があり、活発な議論が行われました。
UNZAでの日ザ外交関係樹立60周年記念JICAチェア
その他、田中理事長は、JICAが協力を行っているルサカ郡総合病院の内の一つであるチャワマ病院、ザンビアとボツワナを繋ぐカズングラ橋及びそのワンストップ・ボーダーポスト(OSBP)施設【注3】、並びにリビングストン博物館等の事業サイト視察を行い、長年に渡る協力の成果を確認するとともに、今後の展望等についてJICA事業関係者やザンビア政府高官等と意見交換を行いました。
今回の田中理事長によるザンビア訪問を踏まえて、JICAは引き続き日本とザンビアをつなぎ、ザンビア発展のパートナーとして活動を続けていきます。
【注3】ワンストップ・ボーダーポスト(One Stop Border Post:OSBP):内陸国の国境において、両国それぞれで行われていた通関や出入国の手続きを、一か所で行えるようにすることで、人やモノの効率的な移動を可能にする取り組み、あるいは施設そのものを指す。
UNZA獣医学部視察
ジョージコンパウンド給水施設視察
チャワマ病院視察
カズングラ橋・OSBP視察
リビングストン博物館視察
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