JICA緒方研究所

ニュース&コラム

日欧協力のさらなる可能性を探る 安全保障と開発に関する日欧共同会議開催

2012年3月12日

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JICA研究所は2012年2月21日、「Addressing Local Conflicts Before They Turn Global:紛争の拡大を未然に防ぐ対応を目指して」と題する会合をコンラート・アデナウアー財団(KAS)及び日欧上級研究ネットワーク(EJARN)とともに開催しました。ドイツの財団であるKASは、研究や教育プログラムを世界的に実施するシンクタンクです。またEJARNは、日欧関係の政策研究を目的とするヨーロッパの学者のネットワークです。

 

KASとEJARNは、紛争後の復興、安定化、紛争国での開発といった分野での日本とヨーロッパの協力の可能性と課題を探る共同プロジェクトを進めており、今回の会議はその一環として行われ、約150名の研究者、実務者、外交官、学生が参加しました。

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緒方 貞子 JICA理事長

会議はJICA研究所の細野昭雄所長の開会の挨拶で始まり、JICAの緒方理事長、駐日欧州連合(EU)代表部ハンス・シュヴァイスグート大使がそれぞれスピーチを行いました。緒方理事長は、紛争後の現場で生じる人道支援と開発機関の業務のギャップの問題、また人間の安全保障の概念を実践に移す取り組みについて、前職の国連難民高等弁務官、及び現職のJICA理事長としての経験をもとに論じました。人間の安全保障の問題を解決するための方法は、それぞれの国、その問題の背景、時代によって異なり、それ故にそれぞれのニーズや環境に対応するには困難が伴うと指摘しました。一方、シュヴァイスグート大使は、EUの紛争予防政策について紹介し、アフガニスタン、ソマリア、南スーダンなどの国での事業について説明した後、包括的なアプローチと長期的な取り組みの重要性を強調しました。

 

その後、「局所的な安全保障・開発の課題とグローバルな安定とのつながり」について、ポール・ミッドフォード准教授(ノルウェー科学技術大学)と鶴岡路人主任研究官(防衛研究所)が日欧双方の視点をそれぞれ紹介しました。

 

セッション2ではアジアの経験について、アクセル・ベルコフスキー教授(パヴィア大学)がミンダナオの事例を、JICA研究所の本名純特別研究員(立命館大学教授)が東南アジアにおける海上犯罪の事例を発表しました。本名研究員は、JICA研究所の研究プロジェクト「ASEAN統合における『人間の安全保障』の主流化」の代表者を務めています。同研究員は、海賊行為のほかにも様々な海上犯罪(違法漁業、人身売買など)が横行していると述べ、これに対する効果的な対応策として、海上の治安にたずさわる執行機関を中心とした非軍事的な地域協力や沿岸地域の貧困問題への取り組みなどを提案しました。「こういった問題は、海上の問題として考えられているが、実は陸上の問題でもある。」と本名研究員は話しています。

 

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ソデルベリー教授
ストックホルム経済
大学

閉会の挨拶をする
ヨルク・ヴォルフ氏
KAS日本事務所代表

セッション3では、マリー・ソデルベリー教授(ストックホルム経済大学)が南スーダンでの現地調査を踏まえた分析と政策提言を、JICA研究所の片柳真理研究員が「アフリカにおける暴力的紛争の予防」プロジェクトの研究成果を紹介しました。片柳研究員は、「水平的不平等」の概念を用いた分析に基づきアフリカ社会の構造的問題について述べ、ブルンジ、ガーナ、ナイジェリアなどで適用された問題解決の手法を紹介しました。研究チームが調査したところ、客観的な水平的不平等(統計に表れるような民族集団間の不平等)と主観的な水平的不平等(民族自身が認知している他集団に対する自集団の優劣)には差異があることが明らかになりました。国境を越えてもたらす紛争の再発を防止するため、開発実務者はこのような「認知」の差異を考慮しながら事業を企画立案し、きめ細かい開発計画で被援助国政府を支援していくことが重要であると片柳研究員は話しています。

最後のセッションでは、パネリストが当日行われた発表の主な議論の要点を総括し、グローバルな安全保障、安定、開発におけるさらなる日欧協力の道筋を示しました。

 

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片柳 真理
リサーチ・アソシエイト

室谷龍太郎
リサーチ・アソシエイト

室谷龍太郎リサーチ・アソシエイト(RA)はパネリストの一人として発言し、非伝統的安全保障(人間の安全保障など)から伝統的安全保障(軍事安全保障など)まで、安全保障の問題を包括的に捉える重要性を強調しました。室谷RAは、日欧は援助モダリティの選好に違いがあるので、連携の効果を最大限発揮しうるのが現場レベルなのか政策レベルなのか見極める必要があると述べ、日本とEUとが被援助国政府とどのような関係を築くことができるかを常に考えなければいけないと付け加えました。

 

今回の会議は、日本とヨーロッパ発の情報や意見を交換する機会となりました。室谷RAは「日本の研究者や参加者にとって今回の会議は、JICAが開発現場で行っていることをヨーロッパの関係者に示す場となったはず。」と話し、また「今回の議論は、安全保障問題の幅の広さ、及び日本の開発援助で人間の安全保障の概念を現場で実践していくことの重要性を改めて感じさせてくれた。」と語りました。

日時2012年2月21日(火)
場所JICA研究所
主催者JICA研究所
コンラート・アデナウアー財団(KAS)
日欧上級研究ネットワーク(EJARN)



開催情報

開催日時2012年2月21日(火)
開催場所JICA研究所

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