JICA緒方研究所

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アフリカの産業人材育成の課題を議論-TICADVIフォローアップ・国際シンポジウム

2017年3月6日

アフリカにおいて、雇用の拡大と貧困削減につながる産業の発展をもたらすためには、産業界のニーズに合った技術と知識を持った人材の育成が求められています。2016年8月に開催された第6回アフリカ開発会議(TICADVI)でも、その重要性が確認されたことから、JICAと名古屋大学は2017年2月23日にTICADVIフォローアップ・国際シンポジウム「アフリカの持続可能な開発に向けた産業人材育成」をJICA市ヶ谷ビルで開催しました。アフリカ諸国からの参加者や現地事情に詳しい研究者がアフリカにおける産業人材育成の現状と課題、そして今後の取り組みについて議論しました。

基調講演する名古屋大学の山田肖子教授
基調講演する名古屋大学の山田肖子教授

名古屋大学の山田肖子教授は基調講演で、アフリカの経済成長により雇用が拡大しているにもかかわらず、労働生産性の低さや、特に若年層の失業率が高い問題を指摘し、変化する産業の需要に見合う技能形成の必要性について説明しました。「近年、アフリカ経済の好調を受けて日本企業も投資への関心が高まってはいるが、アジアに比べてアフリカに対する情報や経験が圧倒的に不足しており、現地で技術力や指導力のある人材を育てるメカニズムを必要としている。アフリカでは雇用は拡大しているものの労働生産性が低く、社会が全体として成長するためには人づくりが急務」と指摘しました。

JICA産業開発・公共政策部の富田洋行課長がアフリカでの産業人材開発に向けたJICAの取り組みについて発表。基礎教育から高等教育までのシームレスな支援を1本の木と例え 、エチオピアで成果を出したカイゼンをアフリカに普及するなどして人材育成を進め、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献していくと話しました。

エチオピア教育省のレンマ・テショメ副大臣(左)と南アフリカの技能認定機構のジュリー・レディー博士
エチオピア教育省のレンマ・テショメ副大臣(左)と南アフリカの技能認定機構のジュリー・レディー博士

エチオピア教育省のレンマ・テショメ副大臣が、同国の産業開発の政策と労働市場の現状について発表しました。同国の強みである裁縫業や皮革産業の発展に力を入れているとし、関連企業のニーズに応える技術を持った人材の育成のため、産業技術教育・職業訓練(TVET)を重要視して制度改革に取り組んできたと説明しました。

三井物産戦略研究所の白戸圭一主席研究員

南アフリカの技能認定機構のジュリー・レディー博士は、例えばエンジニアの資格を持っていながら金融分野の仕事に就く人が多いなど、教育と就職が結びついていない同国の現状を説明。国家資格の認定制度を普及させることで身についた技術を正しく測り、産業人材の質の向上を目指すと述べました。

三井物産戦略研究所の白戸圭一主席研究員がアフリカで事業を行っている日本企業の声を紹介したうえで、「日本の経済発展は国内企業の成長で実現したが、アフリカでは外資企業が発展の鍵を握っている。日本とアフリカでは産業人材のイメージが違うのではないか。アフリカでは、外資企業のニーズに合わせた産業人材育成という視点が必要」と提起しました。

その後のパネルディスカッションでは、経済発展の土台となる産業人材に求められるスキルとは何か、雇用側と被雇用側のミスマッチを埋めるため、どのような取り組みが必要かについて、参加者を交えて活発な議論が展開されました。また、会場からは「教育を受ける人が増えても受け皿となる産業がない。どういう産業の育成が必要と考えるか」「日本がアジアでの開発の経験をアフリカで生かせるのはどんな点か」といった質問が出され、パネリストとの間で議論が行われました。シンポジウムを通じ、アフリカの持続的な成長を実現するため、日本にもアフリカにも利益をもたらす人材育成について考えました。

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