JICA緒方研究所

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メキシコでの防災グローバル・プラットフォーム会合で発表—ゴメズ研究員

2017年6月23日

サイドイベントで発表するゴメズ研究員
サイドイベントで発表するゴメズ研究員

JICA研究所のゴメズ・オスカル研究員が、2017年5月22~26日にメキシコのカンクンで開催された防災グローバル・プラットフォーム会合(The Global Platform for Disaster Reduction)に参加しました。国連国際防災戦略事務局(UNISDR)が主催したこの会合は、加盟国政府を中心に、民間セクター、市民社会組織、学術研究機関等を含む関係機関が、防災に係る進捗・取り組みを共有する世界規模の会合です。2007年の第1回開催以降、第5回目となる本会合には、各国元首や財務省、公共事業省などの政府関係者や民間セクター、市民団体、研究者など、180以上の国と地域から約6,000人の参加者が集まりました。

ゴメズ研究員は、JICAと国際復興支援プラットフォーム(IRP)が26日に共催したサイドイベントで、「Innovative Actions on Build Back Better: Unpacking International and Local Cooperation Experiences」と題したセッションに登壇しました。まず、被災時よりも災害に強くなるように被災地を再建する「より良い復興“Build Back Better”アプローチ」を実現するための重要な枠組みの一つとして、人道危機対応でのコンティニュアム(continuum: 救援、復興、開発の連続的実施)について説明しました。

続いて、JICA研究所が実施している「二国間援助機関による人道危機対応に関する比較研究」でのホンジュラス、インドネシア、フィリピンの3つのケーススタディをもとに得た以下の研究成果を紹介しました。

第一に、日常生活を通じて復興と長期的な防災を結び付けるのは現地の機関やアクターであるため、危機への対応には被災地と被災者を中心に据えるのが基本ということです。1998 年に発生したハリケーン・ミッチ(ホンジュラス)でも2004年のスマトラ島沖地震(インドネシア)でも、地元の防災機関が発足し、被災地の取り組みを推進してきました。ただし、地元の主導力が強いほどドナー同士の連携が弱くなり、ドナーの援助が救援に限定される怖れがあります。そのため、緊急時に集まった資金を復興と長期的な防災にも活用できるようにする戦略が必要です。

第二に、防災に関わる全てのアクターで、災害発生時時から防災まで見越した長期的なビジョンを共有することが非常に重要ということです。ただビジョンを掲げるだけでは意味がなく、知見に基づいたビジョンをもつことで実際にうまく機能します。好事例として、2006年のジャワ地震後の復興では、2004年のスマトラ島沖地震から学んだ教訓をもとに住民参加型で家屋の再建計画を立てるなど、インドネシア政府が復興支援と防災を関連付けた取り組みを行うことができました。一方、この事例のように、復興支援と防災を結び付けて取り組むことを慣習化するのは難しく、そのためにはさらなる研究と実践が必要です。

JICAはインドネシアで災害の被害軽減に向けた取り組みを実施。その一環で、大字、地方自治体、住民が共にハザードマップを検討(写真:JICA/今村健志郎)
JICAはインドネシアで災害の被害軽減に向けた取り組みを実施。その一環で、大字、地方自治体、住民が共にハザードマップを検討(写真:JICA/今村健志郎)

第三に、大災害が一度起こっただけでは、少なくとも国レベルで人々の意識や制度が変わるのは難しいとされます。そのため、災害は変化を生むチャンスではあるものの、大きな変化を過度に期待すべきではないということです。

ゴメズ研究員は「ドナーによる災害援助は短期の救援に偏りがちになる。その時に集まった資金を蓄えておき、ドナーが引き上げた後の復興や防災の段階で再配分できるのは、救援を受け入れた地元の機関。だからこそ復興や防災には地元主導が重要だと、東日本大震災後の日本で実感した」と締めくくりました。

このほか、JICAは今回の会合全体を通して様々なセッションに参加し、積極的に情報発信を行いました。


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