JICA研究所

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日本の開発協力の歴史を未来に生かす—国際開発学会でJICA研究所の取り組みを発表

2017年12月19日

研究プロジェクト「日本の開発協力の歴史」について発表した北野所長

2017年11月25、26日に国際開発学会第28回全国大会が東洋大学で開催され、JICA研究所が現在実施している取り組みについて発表しました。

25日の「開発協力でなぜ歴史が重要なのか?」をテーマに掲げたラウンドテーブルでは、JICA研究所の北野尚宏所長が座長を務め、JICA研究所で実施中の「日本の開発協力の歴史」研究プロジェクトについて発表。北野所長は新興国が台頭する中で日本として新たな取り組みを行っていく上で、自らの開発協力の歴史を振り返る意義を強調し、研究成果を全7巻の書籍として発行予定であることを説明しました。

続いて3人の執筆者が、それぞれ執筆を担当する巻の構想について発表しました。『日本の開発協力と知の履歴-学術と実践の対話をめぐって』を担当する高橋基樹京都大学教授は、日本の開発協力の歴史の固有性を代表する「自助努力の支援」と「日本の経験」という言説の変遷について論じました。『絆、偶発、主体性-「受益者」が回顧する開発協力』を担当する峯陽一JICA研究所客員研究員(同志社大学教授)は、制度史や思想史を補うような「草の根のオラル・ヒストリー」を目指し、現場の人々の体験を深掘りしていきたいと表明。『アジアのインフラを整備する-自助努力支援の軌跡-』を担当する山田順一JICA理事は、アジアのインフラ整備に焦点を当てる理由をタイの東部臨海開発を事例に論じつつ、失敗事例も取り上げていきたいと発表しました。

これらの発表を受けて、コメンテーターの金昭延西江大学教授が、南南協力を源流とする韓国のODAの歴史を挙げながら歴史研究の意義を強調し、同プロジェクトによる貢献に期待を寄せました。フロアからは、「自助努力」の概念をめぐる検討、国際比較を通した日本の開発協力の特徴の相対化、近代化の議論と開発協力の歴史との関係についてなど、多岐にわたるコメントや質問が投げかけられました。

日本の国際教育協力の歴史を検証する取り組みについて発表した萱島副所長

また、26日のセッション「日本の国際教育協力:歴史と現状」では、JICA研究所の萱島信子副所長が座長を務め、JICA研究所が2017年5月から進めている日本の国際教育協力の歴史を検証し、その結果を書籍にまとめる取り組みについて発表しました。萱島副所長と黒田一雄JICA研究所客員研究員(早稲田大学教授)が書籍の出版企画について説明し、各執筆担当者が報告を行いました。

辻本温史JICA研究所リサーチオフィサー、山田肖子名古屋大学教授、島津侑希名古屋大学特任助教は、「職業訓練・産業人材育成(TVET)分野における日本の国際協力の歴史—人づくりの源流から教育協力の国際潮流まで—」と題し、日本のTVET分野の協力は資金協力を背景とした技術協力として始まり、1980年代に「人づくり協力」としてピークを迎えたことなどを説明。丸山英樹上智大学准教授は青年海外協力隊では人的資源分野の隊員が増え、ソフトパワーにシフトしてきた可能性を、石田洋子広島大学教授は日本による教育行政の能力強化支援が開発調査から始まり、学校建設や教育内容にかかる支援の中でも取り組んできたことを指摘しました。小松太郎上智大学教授と荒川奈緒子JICA研究所リサーチオフィサーは、「日本の国際教育協力—紛争影響国における教育支援—」と題し、この分野を担ってきた主要なアクターである国際機関、JICA、NGOについて、それぞれの支援内容を概観しました。

こうした発表を受け、コメンテーターの馬場卓也広島大学教授と峯陽一JICA研究所客員研究員(同志社大学教授)は、日本の協力の独自性の変遷、現場と行政の連動、国際潮流との比較などについて指摘しました。会場からは、1990年代に基礎教育協力を始めた際の政策転換の背景や日本国内の事情などについてコメントがあり、活発な議論が行われました。

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