世界銀行との連携でタジキスタンでの高頻度家計パネル調査に参加—山田研究員ら

2018.06.05

タジキスタンは、海外への出稼ぎ移民(特にロシアの建設現場での季節労働)への依存度が高く、年によっては出稼ぎ労働者からの送金がGDPの40%以上に達することもあります。出稼ぎ労働者を送り出している家計は、どのように働き、暮らしているのか。また、彼らは外的経済環境の変化からいかなる影響を受け、それに対応しているのか。これらを理解することは、出稼ぎ移民に依存した国・地域における開発事業をより効果的なものにしていく上で重要です。

タジキスタン南部ハマドニの市場で働く女性たち(写真:JICA/久野真一)

JICA研究所では、研究プロジェクト「フィリピンとタジキスタンの家計における海外送金に関する研究」の一環として、世界銀行がタジキスタンで実施している「Listening to Tajikistan (L2TJK)」調査に参画しています。L2TJKは、タジキスタン全土に分布する800家計をサンプルとして、電話(CATI: Computer Assisted Telephone Interview)を使って継続的に家計の状況を追跡する調査です。2015年6月に開始され、以来、ほぼ毎月1回の頻度で電話インタビューが行われています。訪問インタビューを伴わないため、高頻度のパネル調査を安価に行うことができ、家計の状況をダイナミックに把握するのに適しています。

JICA研究所は、この調査に2017年9月から参加。世界銀行が従来から調査を行っていた項目に加え、移民や送金の状況・家計の暮らしぶりに関連した追加項目を、JICA研究所の山田英嗣研究員、村上エネレルテ研究員、村田旭招聘研究員が提案し、連携が実現しました。この直近の調査データの速報が、以下の世界銀行のウェブサイトで報告されています。

今回は、移民に関連する項目と、交通手段の利用に関連する項目について、データの推移が紹介されています。以下のPDFからもご覧になれます。

移民に関連する項目

交通手段の利用に関連する項目

例えば、移民に関する項目の速報では、移民を出している家計(with migrant)と、そうではない家計(no migrant)について、就労の状況を比較しています。移民を出している家計の方が、全期間を通じて就労率が10%程度低く、出稼ぎ労働者を送るかわりにタジキスタン国内では働かない傾向があることが分かります(グラフHousehold Head Currently Working)。また、出稼ぎのいる家計の方が所得は高めなのに対し(グラフAverage Real PC Income: by HHS with and without Migrants)、貯蓄は低調(グラフAmount Saved)で、移民送出家計の消費性向の高さを示唆しています。

今後も本調査での世界銀行との連携を続け、アカデミアと開発現場双方への発信を図っていきます。

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