人道危機対応に関する研究結果を盛岡とオランダ・ハーグで発表—ゴメズ研究員

2018.09.18

今日、災害や紛争などの人道危機対応には、短期的な救援だけでなく、長期的な復興支援や危機の再発防止への支援も必要であると国際社会では理解されつつあります。しかし、救援から復旧、予防、開発へのコンティニュアム(continuum:連続的実施)を実現するのはしばしば困難であることが、これまで示されてきました。

JICA研究所の研究プロジェクト「二国間援助機関による人道危機対応に関する比較研究」では、国際機関、二国間援助機関、NGO、研究機関、被災国の関係機関などが、どのようにこうしたコンティニュアムに取り組んできたかを研究しています。

JICA研究所のゴメズ・オスカル研究員が国際防災・危機管理研究 岩手会議で発表

2018年7月17~19日に岩手県盛岡市で開催された国際防災・危機管理研究 岩手会議で、JICA研究所のゴメズ・オスカル研究員が同プロジェクトの研究成果を発表しました。岩手大学地域防災研究センター、清華大学公共管理学院危機管理研究センター、ハーバード大学ケネディースクール・クライシス・リーダーシップ・プログラムが共催した同会議には、15カ国以上から500人を超える参加者が集まりました。

ゴメズ研究員は、「Crisis Management beyond the Humanitarian-Development Nexus: The continuum in the management of disasters」と題したパネルセッションに登壇。1998年にホンジュラス全土で甚大な被害をもたらしたハリケーン・ミッチのケーススタディーに焦点を当てながら、国際協力に予防策をどう組み入れるか、特に救援と復興の段階における予防や、その制度化について議論しました。このパネルセッションでは、同プロジェクトに携わるメンバーのうち、JICAの石渡幹夫国際協力専門員(防災・水資源管理)がインドネシアのスマトラ沖大地震およびインド洋津波について、東北大学災害科学国際研究所の地引泰人助教授がフィリピンの台風ヨランダのケーススタディーについて共有しました。

これらのケーススタディーに基づき、ゴメズ研究員は、いかに災害対応のプロセス全体に“予防”の要素を組み込むことが難しいか、特に災害発生後の復興計画に組み込む困難さを説明しました。その理由としてゴメズ研究員が挙げたのは、災害対応プロセスを進める被災国のオーナーシップが高まることで、ドナー間の調整の必要性が低減することです。これにより、ドナーが救援あるいは危機対応の初期段階に支援を注力するという状況に逆戻りしてしまい、予防を支援に組み込むことが一層難しくなります。さらに、救援に割り当てられた資金は救援にしか使えないというように、資金援助の用途が決められている構造的な特徴も、救援と他の危機対応プロセスとのギャップを埋めるのを難しくしています。被災国の行政やNGOなどの地元のアクターが、災害後の住宅復旧や生計改善などといった各セクターの知識を深めることが、危機対応のコンティニュアムの実現につながると、ゴメズ研究員は主張しました。

質疑応答では、参加者から「たとえドナーが救援活動に注力するようになったとしても、他のドナーがこの変化による損失を埋め合わせるのではないか」というコメントがありました。ゴメズ研究員はこれに対し、「そうだとしても、被援助国は救援に割り当てられた資金を復興など他の用途に配分し直すことはできないため、資金の配分は問題を抱えたままとなる」と答えました。

同研究の成果は、2018年9月に書籍『Crisis Management Beyond the Humanitarian-Development Nexus』としてRoutledge社より刊行されます。

ゴメズ研究員はハーグで開催されたInternational Humanitarian Studies Association第5回大会にも参加 (写真: Annik de Carufel)

ゴメズ研究員は、2018年8月27~29日にオランダのハーグで開催された人道危機に関する研究者のネットワークInternational Humanitarian Studies Association(IHSA)の第5回大会にも参加しました。同書籍に関するラウンドテーブルが開かれ、ラテンアメリカの新興国やASEAN+3での人道危機への取り組みなどについての発表を行いました。

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