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大洋州の島々で廃棄物管理の「人」が育った物語—プロジェクト・ヒストリー出版記念セミナーを開催

2019年3月13日

2019年2月28日、JICA研究所は書籍「プロジェクト・ヒストリー」シリーズの第21弾「僕の名前はアリガトウ 太平洋廃棄物広域協力の航跡」の出版記念セミナーを開催しました。

大洋州における廃棄物改善の協力は、2000年にサモアで開始されました。その後、JICAは2011年から2016年に11カ国を対象に「大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト(通称J-PRISM)」を実施し、2017年以降は9カ国を対象に同プロジェクトのフェーズ2を実施中です。本書では、この廃棄物管理支援がどのように始まり、どのように二国間協力から広域協力に発展していったのか、15年あまりの軌跡が描かれています。

冒頭、JICA研究所の大野泉研究所長が、「小さな島々に適した具体的な解決策を提示しながら、JICA専門家としてプロジェクトの中心的な役割を担っていた」と本書の著者である天野史郎氏(インスピラーレ開発研究所代表)を紹介し、「本セミナーはそのようなプロジェクトの“主役たち”から直接話を聞ける貴重な機会」とあいさつしました。

プロジェクトの軌跡を“航海”に例えて語った著者の天野史郎氏

次に、天野氏が本書の概要を本プロジェクトの活動ポイントと併せて紹介。まず、大洋州の島しょ国は地理的に島が点在し交通の便が悪い隔絶性や、大規模な処分場・埋立地を造れない国土の狭小性、外国の援助や輸入に依存しがちな経済構造から、外部からの物資がゴミとなり滞留してしまうこと、加えて、近年多発している自然災害による災害廃棄物への対応も迫られるといった特徴を有することを説明しました。そのうえで、広域協力を進めるにあたり、サモアに本部を構え、21の国と地域・先進5カ国が加盟する国際機関「太平洋地域環境計画(SPREP)事務局」との連携が要であったと指摘しました。

天野氏は本プロジェクトで実施した研修は80~90回、のべ参加者は約1,900人、ローカルの指導者として役割を担った人がのべ172人と報告し、自身が本書に込めた「技術協力は人に始まり人に終わる。専門家主導ではなく、カウンターパート(CP)たちを主役にすることがプロジェクトの成功につながる」というメッセージを印象付けました。

左から、パネルトークに登壇した桜井國俊氏、坂井友里江氏、西川順一氏、杉山茂氏

続いて行われたパネルトークでは、最初に沖縄大学名誉教授の桜井國俊氏が登壇し、サモアでの取り組みと成果を中心に発表を行いました。桜井氏は本プロジェクト開始当初の2000年から協力に携わり、サモア・沖縄で交互に実施された人材育成研修の様子や、埋立地の改善に「準好気性埋立構造(福岡方式)」が大洋州で初めて採用されたことを紹介しました。

さらに、「J-PRISMのスローガンは大洋州の人々がお互いの事例から学び合う南南協力」としたうえで、その成果として各国のCPたち自らが執筆した太平洋島しょ国向けの廃棄物処理ガイドブックが2018年に完成したことを報告。加えて、「最初は沖縄の知見を大洋州に生かせると思っていたが、災害廃棄物の処理など、我々が彼らから学べることも多かった。また、現地の人たちだけでなく、日本の国際協力の人づくりにも役立てられたと思う」と本プロジェクトが日本側にもたらした影響についても述べました。

坂井友里江氏(国際航業株式会社)は、フィジーでの青年海外協力隊時代を含めて11年間、本プロジェクトに関わってきた他、各国における開発コンサルタントとしての経験から、CPとの関係づくり、フィジーやトンガにおけるプロジェクトの活動や成果について報告しました。

続いて、鹿児島県志布志市市役所から西川順一氏が登壇。志布志市は、埋め立てゴミの大幅な削減に行政と住民が協力し、12年連続リサイクル率全国1位(市レベル)を維持しています。志布志市は本プロジェクトと連携する形で研修員の受け入れを行い、CPにはゴミ処理関連の施設だけでなく、市民のゴミ捨ての様子や市職員の仕事に対する姿勢なども視察してもらいました。西川氏は、このような活動を通じて、CPの業務に対するモチベーションをあげ、意識改革を図ることの重要性を語りました。

最後に登壇したJICAの杉山茂氏は2013年から2016年までパプアニューギニア事務所の所長を務めていました。現地事務所の立場から本プロジェクトとの関わりを説明し、「CPである首都圏庁や地元知事と積極的にコミュニケーションをとり、ゴミ問題への理解を深めてもらうことで、活動をバックアップした」と振り返りました。

なお質疑応答では、「人材育成で最も効果的だった手法は何か」「3R+リターンにおいて、具体的にリターンはどうすれば実現できるのか」といった質問があがり、活発な議論が交わされました。

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