TICAD7パートナー事業「ノーベル経済学賞・ジョセフ・スティグリッツ教授と議論する『グローバル化する世界とアフリカ—SDGsの達成に向けて』」開催

2019.09.03

2019年8月27日、明治大学・コロンビア大学政策対話イニシアティブ(IPD)・JICA研究所による共催セミナー「ノーベル経済学賞・ジョセフ・スティグリッツ教授と議論する『グローバル化する世界とアフリカ—SDGsの達成に向けて』」が明治大学で開催されました。

グローバル化の進展とともに、各国間および各国内において格差が広がっています。このセミナーでは、特にグローバル化がアフリカにどのように影響を与えているか、今後、どのように成長していくかをテーマに掲げて議論が交わされました。

JICA研究所の島田剛招聘研究員がモデレーターを務めたパネルディスカッション

セミナー冒頭、明治大学の土屋恵一郎学長は「経済成長に伴う環境や気候変動などの問題をどのように解決していくかが重要。アフリカに関する議論を通じて日本の向かうべき方向を考える機会にできれば」と述べました。続いて開会のあいさつに立ったJICA研究所の藤田安男副所長は、2008年以来続いているスティグリッツ教授が率いるコロンビア大学IPDとJICA研究所との共同研究に触れ、これまでに研究成果として発刊された3冊の書籍や最新刊『Quality of Growth in Africa(アフリカにおける質の高い成長)』は、アフリカにおける開発の実務者、そしてJICAがアフリカの課題を解決するための業務や研究を行う上での指針となるだろうとの考えを述べました。

スティグリッツ教授の基調講演では、アフリカの開発や経済成長については従来にはない新しい考え方が必要である点が、さまざまな角度から論じられました。例えば、かつて東アジアに経済成長をもたらした輸出主導型の製造業モデルは、AI、暗号通貨、SNSなどの「雇用を減らす」新しい技術のイノベーションが進んだため、そのままでは現在のアフリカでは機能しないであろうと述べました。さらに、先進国・途上国間の差を埋めるためには、雇用を新たに生むようなイノベーションと、ラーニング(生産者の能力を向上させるための学習)が必要であり、経済発展の源泉であると述べました。また、2016年の「ストックホルム声明」にもあるように、そもそもGDP成長はそれ自体が目的ではないと述べ、成功の尺度をGDPといった経済指標だけに求めるのではなく、人的および社会資本に資する「成長の質」を問うべきだと強調しました。

基調講演を行ったジョセフ・スティグリッツ教授

このスティグリッツ教授の基調講演の資料(PDF)は、以下の明治大学ウェブサイトからご覧ください。

続くパネルディスカッションでは、世界銀行のハフェズ・ガネムアフリカ地域担当副総裁とコロンビア大学のアクバル・ノーマン教授をパネリストに迎え、明治大学情報コミュニケーション学部准教授でJICA研究所の島田剛招聘研究員がモデレーターを務め、各パネリストに質問を投げかけパネリストが応える形でパネルが進行しました。

ガネム副総裁は、膨大な天然資源を持つアフリカは「最後のフロンティア」であると、ポジティブな見方を示しました。また、全人口の3分の2が25歳以下という点においては、人的資源や教育、ジェンダー、保健への投資が非常に重要であると指摘。課題である雇用の創出、汚職の根絶などにテクノロジーが大きな貢献を果たせると希望を示しつつも、インターネットへのアクセスが他国と比べ高額な国があることにも触れ、適切な競争政策や不平等を是正する公的プラットホームを講じる必要があると述べました。

パネルディスカッションに登壇した世界銀行のハフェズ・ガネム副総裁

ノーマン教授は、環境問題や雇用も含めた広い意味での産業政策が質の高い成長のためには必要であると強調しました。例えば環境問題では、気候変動における「緩和策」への技術開発が、アフリカに技術面での躍進をもたらす可能性があると言及。世界各地の先進的な経験も教訓に、学習・産業・技術を一体化した政策(learning, industrial, and technology (LIT) policies)が、持続可能な成長をもたらす一種の構造転換を引き起こすだろうと期待を込めました。

パネルディスカッションに登壇したコロンビア大学のアクバル・ノーマン教授

最後に、明治大学情報コミュニケーション学部の大黒岳彦学部長が閉会のあいさつを述べ、日本でスティグリッツ教授らと議論を共にする貴重な機会となったセミナーを締めくくりました。

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