実施中プロジェクト

ミャンマーにおける都市給水事業に関する実証研究

1990年以来、世界では新たに21億人が改善された水と衛生にアクセスできるようになりましたが、現在も人口増加や生活水準の向上、経済発展等に伴って水需要が増え続けており、水不足や水質汚濁の問題が多くの途上国において残っています。特に首都をはじめとする大都市では、近年、都市化が進み、人口集中や不法居住者の流入が起こった結果、給水や衛生といった社会サービスを適切に供与できない事態が生じています。

本研究の対象案件である無償資金協力「マンダレー市上水道整備事業」では、第二の都市であるマンダレー市の南部において管路給水施設の整備を行いました。事業対象地域では多くの住民が浅井戸を所有しており、生活用水は井戸からポンプで汲み上げた水を使ってきました。飲料用としては、主にボトル水を購入しています。

多くの一般家庭は井戸を掘削、利用しているので、野放図な地下水利用は資源の枯渇にも繋がり、長期的には都市部の住民に脆弱性、リスクをもたらす要因となると考えられます。水道行政を担うマンダレー市開発委員会は、膨らむ水需要に対する水資源の適切な管理、安全な水の提供による生活水準の改善を目指しており、配管給水の普及、各戸への個別接続を進めてきました。都市部での水道事業は、都市の開発、持続的な発展に向けて不可欠なインフラと言えます。他方、配管給水への各戸接続が実現した場合でも、人々は実際にどのように利用するか、水道水の利用により人々の厚生水準にどのような変化が生じるかといった点は、不確かです。配管給水導入による住民の水利用パターンの変化は一様ではないと推察されます。

以上の問題意識の下、本研究では、本水道事業の対象地区とその比較地区における人々の水利用の状況やその満足度などを見ることで、水道事業の効果検証、分析を行います。本研究結果は、途上国都市部において水道事業を行うにあたり生じうる状況や見込まれる事業効果へのエビデンスとして活用されることが期待されます。