平和構築と人道支援

平和構築と人道支援

今日の世界では、武力紛争、大規模自然災害、感染症の爆発的流行、越境犯罪などのさまざまな危機により、人々の生命、生活、尊厳が脅かされています。その背景には、貧困、差別、不平等、気候変動など多くの要因があり、国際社会はより革新的かつダイナミックに問題解決にあたることが期待されています。​

平和構築と人道支援領域では、さまざまな脅威に直面する人間の安全保障や持続的な平和をどのように実現するかとの観点に立ち、これら問題の背景にある要因をより体系的に明らかにする研究を進めています。​

人間の安全保障の実践は数年以上にわたり取り組んでいるテーマで、変化する時代に対応しうる人間の安全保障とはいかなるものか探求しています。また、平和構築も同様に重要なテーマで、紛争影響下にある社会において持続的な平和を促進する要因や阻害要因を分析しています。これらの研究を通じて、人道対応、持続的な開発、持続的な平和に従事する多様な主体による取り組みを比較分析することにより、課題に対処する有効な支援のあり方を探ります。​

研究プロジェクト(実施中)

研究プロジェクト(終了)

二国間援助機関による人道危機対応に関する比較研究

1991年の国連総会決議46/182以降、武力紛争、自然災害、干ばつやパンデミックなどに起因した人道危機に対する緊急支援(relief)と、その後の復旧・復興(recovery)、予防(prevention)そして開発(development)への移行に継ぎ目なく対応する必要性が叫ばれてきました。さらに近年では、危機発生時には、緊急対応だけでなく、早期から予防や開発を見越した支援の重要性が認識されています。このことは、人道と開発といった伝統的な活動区分を超えた多様なアクター間協力の要請にも繋がっています。JICAでは、2008年10月の新JICA戦略において包括的/連続的(シームレス)な支援の重要性を打ち出していますが、運用面では未だ課題も多く、一層の体制整備が求められていると認識しています。
このような背景をふまえ、JICA研究所では、二国間援助機関が人道危機対応を継ぎ目なく実施するために必要な政策や制度とは何かを明らかにすることを目的として、2015年1月より「二国間援助機関による人道危機対応に関する比較研究」を実施しました。本研究では、外部研究者の協力を得つつ、6つの危機(東ティモール紛争、南スーダン紛争、シリア危機、スマトラ沖津波、台風ヨランダ、ハリケーンミッチ)の事例調査から実証的研究を行いました。これまで13カ国において、国際機関、二国間援助機関、NGO、研究機関の本部および現地ミッションへの聞き取り調査を実施してきました。研究の成果の一部として、5つのメッセージを掲載した冊子とリサーチペーパーを2016年世界人道サミットで配布しました。
その後、JICARIワーキングペーパーおよび書籍を発表いたしました。

研究期間|2015.01.01〜2019.03.31
詳しく見る

東アジアにおける人間の安全保障の実践

「人間の安全保障」は、1994年に国連開発計画(UNDP)の「人間開発報告書」で紹介されて以来、普及が進み、概念の整理についての議論は収斂しつつあります。しかし、人間の安全保障を脅かす脅威が実際に生じた場合に現場でどう実践していくのかについては未だ研究途上であり、特に具体的事例を横断的に比較分析した研究はほとんどありません。
 本研究では、こうした背景の下、国毎に多様な動きのある東アジア地域(日本、中国、韓国、ASEAN諸国)に焦点を当て、人間の安全保障に関する認識(perception)と実践(practice)を2つの段階に分け研究しました。
 まず第1段階研究では、東アジア各国において人間の安全保障の概念がどのように理解され、また何が人間の安全保障上の脅威として認識されているかを政府の政策文書や政府/市民社会/研究者等異なる立場の複数関係者へのインタビューから探りました。次に第2段階では、人間の安全保障に対する脅威が具体的に生じた事例を10ケース程度取り上げ(自然災害、紛争、感染症の爆発的流行等)、それらの危機に直面してどのような実践がなされたのかを事例毎に詳細に分析しました。これにより、人間の安全保障を実現するための実践を今後より一層推進していくための教訓を得ることができました。

研究期間|2013.10.01〜2019.03.31
詳しく見る