実施中プロジェクト
人間の安全保障とは、人びとの命、暮らし、尊厳が守られていることを意味します。これが十分でないと感じる場合、またはよりよい機会を求めて、人びとは慣れ親しんだ土地を離れ、移民として困難な旅に出ていきます。各国の移民政策に不確実性がある時代においても、国内、国外、時に大陸を越えて人々は移動し続けています。
サハラ以南アフリカの移民に関して言えば、その大多数がヨーロッパや北米ではなく、サハラ以南アフリカ内で移動をしていることは注目すべき事実です。International Migrant Stock 2024(※)によると、サハラ以南アフリカ内移民の数はヨーロッパへの移民の4倍以上、北米への移民の9倍以上でした。 長年にわたりこのような傾向が続いていますが、サハラ以南アフリカ内の移民に関する研究はあまり行われてきませんでした。
そこでJICA緒方研究所では、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が開催され、日本とアフリカのつながりの強化が期待される2025年、人間の安全保障の観点からサハラ以南アフリカの人々の移動のプロセスを明らかにする研究プロジェクトを開始しました。この研究プロジェクトでは、サハラ以南アフリカ内やアフリカから日本への人の移動の体験に焦点を合わせます。現地の状況に通じた研究者が、サハラ以南アフリカ約10ヵ国と日本で移民/元移民にインタビュー調査を行い、個々人の移動の道のりを明らかにします。
この研究プロジェクトでは次のことを目指しています:
a) 移民の実情をよりよく理解する。また、移動のパターンが構造的な要因と人びとの主体性によってどのように形成されるのか、移民がどのような困難や機会に直面するのかを、個々人が感じ、語るナラティブ(物語)から理解する。
b) サハラ以南アフリカ内における移動プロセスがより注目されるようになる。
c) サハラ以南アフリカにおいて、人びとが必要に迫られてではなく選択によって移動できるようになり、また、移動がより安全かつ生産的な行動となることに貢献する。
d) 移動する必要性に焦点を置き、開発効果を最も高め、サハラ以南アフリカにおける人間の安全保障の実現に資する国際協力政策の形成に貢献する。
※ United Nations Department of Economic and Social Affairs, Population Division (2020). International Migrant Stock 2024.
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