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【TICAD9に向けたアフリカ研究紹介シリーズ第5号】アフリカの平和と安定を目指して

2025.08.15

(写真:JICA/久野真一)

2025年8月20~22日に、第9回アフリカ開発会議(The Ninth Tokyo International Conference on African Development: TICAD9) が日本で開催されます。

JICAもさまざまなテーマ別イベントを実施しますので、ぜひご参加ください!

JICA緒方研究所によるイベントはこちら↓

本イベントに関連した研究プロジェクトの詳細についてはこちら↓

研究プロジェクト「アフリカにおける人の移動と人間の安全保障」
サハラ以南アフリカの移民の大多数は、ヨーロッパや北米ではなく、サハラ以南アフリカ内で移動していますが、その研究はあまり行われていません。そこで、サハラ以南アフリカ内での人の移動ともに、アフリカから日本への人の移動の体験にも焦点を合わせ、移民/元移民にインタビュー調査を行い、人間の安全保障の観点から個々人の移動の道のりを明らかにします。

TICAD9に向けて、JICA緒方研究所ではアフリカに関する取り組みをシリーズで発信しています。

「農業」に関する特集:【TICAD9に向けたアフリカ研究紹介シリーズ第1号】アフリカの発展を支える農業
「経済」に関する特集:【TICAD9に向けたアフリカ研究紹介シリーズ第2号】5月25日はアフリカの日
「社会」に関する特集:【TICAD9に向けたアフリカ研究紹介シリーズ第3号】アフリカの社会が抱える課題解決に向けて

今回は、TICAD9が掲げるテーマ「アフリカと共に革新的な解決策を共創する」の下で取り組む「社会」「平和と安定」「経済」の3つの柱のうち、「平和と安定」に関する取り組みを取り上げます。

人々が安心して暮らせる安定したアフリカを実現させるためには、民主主義の定着と法の支配の推進、紛争予防・平和構築、コミュニティの基盤強化が重要です。JICA緒方研究所では、「平和と安定」に向けたさまざまな研究を実施しています。その一部を紹介します。

紛争からの復興、紛争が長期化する中での難民への支援、そして、そもそも紛争が起こらないように予防し平和を持続させるためにはどうしたらいいのか、さまざまな角度から研究を進めています。

プロジェクト・ヒストリー『アフリカ紛争国スーダンの復興にかける—復興支援1500日の記録』

長年にわたる内戦で国土が荒廃したスーダン。2007年に同国に赴任した宍戸健一首席駐在員(当時)による約1500日におよぶ活動日記を基に、2005年の和平協定などを契機にした地域紛争終結への動きと、国際社会による復興・平和構築支援やJICAの取り組みが描かれています。

プロジェクト・ヒストリー『人道と開発をつなぐ アフリカにおける新しい難民支援のかたち』

紛争や政情不安、暴力的過激主義の影響により、昨日までの人生を奪われ、慣れ親しんだ故郷からの移動を余儀なくされた人々がいます。そうした難民を近隣国から受け入れているウガンダを舞台に、長期化状態にある難民への日本政府とJICAによる協力の軌跡がまとめられています。

研究プロジェクト「レジリエンスと平和構築、暴力的過激主義に関する研究:複雑なシステムにおける持続的平和への視座」

複雑性と不確実性が増す中で、レジリエンス、平和構築、暴力的過激主義の防止(Preventing Violent Extremism: PVE)の関連性を探り、平和、安全保障、ガバナンス、開発、人道支援といった領域を超えて平和を持続するための包括的なアプローチを検討しています。

研究プロジェクト「アフリカにおける暴力的紛争の予防」

「水平的不平等(Horizontal Inequalities: HIs)」などに着目しながら、ルワンダとブルンジ、ガーナとコートジボワール、南アフリカとジンバブエ、ウガンダとタンザニア、ケニアとナイジェリアの個々の事例を取り上げ、「構造」と「プロセス」がリンクして紛争が起きる(ないしは、起きない)メカニズムについて分析しました。

平和と安定には、紛争予防・解決プロセスなどにおける女性の参画や紛争下での女性の保護・権利・特別のニーズに対応する「女性・平和・安全保障(Women, Peace and Security: WPS)」の推進も重要です。ジェンダーに基づく暴力への対応に関しての研究も行っています。

研究プロジェクト「紛争とジェンダーに基づく暴力(GBV):被害者の救援要請と回復プロセスにおける援助の役割」

紛争影響下で生じやすい「ジェンダーに基づく暴力(Gender-Based Violence: GBV)」による被害は、助けを求めるのに心理的・社会的障壁が高い問題です。紛争影響下のコミュニティにおけるGBVに対する認識、被害者の救援要請行動、周りの人々などによる救援活動の実態調査を分析し、支援の改善策を提案しています。

また、紛争の影響による課題の解決や安定したコミュニティの実現に向けて、若者やスポーツといった視点からも研究を進めています。

ニュース「荒井研究員と今井リサーチ・オフィサーがケニアのスラム地域の若者への調査を実施」

ケニアの首都ナイロビのスラム地域に住む若者たちの抱える社会的課題を多角的な視点から明らかにし、それらの課題と犯罪化・暴力化リスクとの関係、収入創出機会や集団間の交流が、これらのスラムの若者たちの経済的・社会的状況にどのような影響を与えるかについて検証しています。

関連研究プロジェクトはこちら↓

プロジェクト・ヒストリー『スポーツを通じた平和と結束ー南スーダン独立後初の全国スポーツ大会とオリンピック参加の記録』

半世紀に及ぶ内戦を経て2011年に独立したものの、紛争が勃発していた南スーダン。“フェアプレー精神に則るスポーツを通じて、南スーダンが一つになることを国民に呼びかけたい”という同国政府の切実な思いを受け、JICAが支援を続けてきた全国スポーツ大会「National Unity Day(国民結束の日)」やオリンピック参加支援といった、スポーツを通じた「平和と結束」の取り組みが描かれています。

研究プロジェクト「スポーツと平和・開発に関する研究」

「スポーツと平和と開発」の視点を踏まえ、南スーダンの全国スポーツ大会の効果を検証するため、スポーツ支援の多様な関係者(選手、観客、政府関係者)間、民族間、民族と国家との信頼関係といった社会関係資本に着目して分析しています。

さらに 、「平和と安定」をはじめ、「社会」、「経済」を含むさまざまな分野における取り組みを通じ、アフリカにおける「人間の安全保障」を実現していく必要があります。JICA緒方研究所では、人間の安全保障とアフリカに関する研究も実施しています。

JICA緒方研究所レポート「今日の人間の安全保障」創刊号―人間の安全保障を再考する 研究ノート1「アフリカにおける人間の安全保障をめぐる理解と実践—歴史とコロナ禍のもとでの変化—

アフリカの人間の安全保障に関する主要な言説、アフリカ連合における人間の安全保障の概念の位置づけと実践状況、人間の安全保障が南アフリカの民主化に果たしてきた役割、人間の安全保障概念が今後アフリカにおいて一層有効性を発揮するために克服すべき課題などについて考察しました。

JICA緒方研究所レポート「今日の人間の安全保障」第2号―複合危機下の政治社会と人間の安全保障 「人びとの視点からアフリカの人間の安全保障を捉え直す ―アフリカ5ヵ国における意識調査結果から」

人間の安全保障を、安全/不安全に関する人びとの意識―将来に対する不安感―の観点から捉えることにより、同概念を分析概念として用いることができるか、チュニジア、ナイジェリア、ケニア、ガボン、アンゴラの計7,600人を対象とした意識調査結果に基づき算定した人間の安全保障スコアから考察しました。

報告書「Revisiting Human Security in Africa in the Post-COVID-19 Era」

ケニア、ガボン、チュニジア、アンゴラ、ナイジェリアにおける人間の安全保障に関する調査を基に、「客観的危機」と「主観的危機」を対比させ、これまで明示されなかった脅威とその優先度、利用可能な適応手段を把握し、危機・脆弱性の克服に向けて必要な取り組みを提言しています。

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