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【TICAD9に向けたアフリカ研究紹介シリーズ第1号】アフリカの発展を支える農業

2025.02.18

(写真:JICA)

2025年8月に開催される第9回アフリカ開発会議(The Ninth Tokyo International Conference on African Development: TICAD9)に向け、JICA緒方研究所のアフリカに関する取り組みをシリーズで発信していきます。第1回目は、アフリカにおける「農業」を取り上げます。

アフリカでは、農業は労働人口の約半数が従事するなど非常に重要な産業です。今後も生産年齢人口が増え続けるアフリカでは、女性や若者が農業セクターで活躍できるようにするなど、健全な経済成長を遂げる上でも更なる発展が期待されています。2025年1月には、アフリカ連合(African Union: AU)の臨時サミットがウガンダの首都カンパラにて開催され、アフリカ農業開発の旗艦プログラムである「包括的農業開発プログラム(Comprehensive Africa Agriculture Development Programme: CAADP) 」へのコミットメントが再確認され、2026年~2035年の10年間にわたり、強靭で持続可能な農業・食料システムの構築に取り組んでいくことになりました。

JICA緒方研究所による以下の研究では、CAADPの遅れの要因を分析し、計画にとどまらず実施に移すことの必要性を強調しています。

その他にも、JICA緒方研究所では、アフリカの農業開発や食料安全保障に関連したさまざまな研究を実施し、知見を共有しています。その一部をご紹介します。

農業の生産性向上

研究プロジェクト「サブサハラ・アフリカにおける米生産拡大の実証分析フェーズ1~3」

TICAD Ⅳで打ち出された「アフリカ稲作振興のための共同体(Coalition for African Rice Development:CARD)」イニシアティブは、コメの生産拡大を通じて、中長期的な食糧問題の改善、農村地域の振興と貧困削減に資することを目的にしています。本研究プロジェクトでは、CARDイニシアティブがアフリカにおけるコメの生産性向上や貧困削減にどのように貢献したのか実証分析を行っています。

各研究プロジェクトの詳細はこちら

書籍『Rice Green Revolution in Sub-Saharan Africa』

サブサハラ・アフリカで稲作の「緑の革命」の推進に向け、効果的な戦略を探ったオープンアクセス書籍です。稲作研修が生産性に重要かつ持続的な効果を及ぼすことや、研修を行った農家から周りの農家に波及効果が生じることを実証しています。さらに、稲作の土地生産性向上における機械化の重要性や、大規模かんがい計画で想定される投資対効果の評価などについての新たな分析結果も盛り込まれています。

プロジェクト・ヒストリー『稲穂の波の向こうにキリマンジャロータンザニアのコメづくり半世紀の軌跡』

かつてコメは貴重な現金収入源であり、庶民はなかなか口にできなかったタンザニア。それが半世紀を経て、今では日常的に人々の食卓に上るようになり、同国は東アフリカ随一のコメの輸出国へと変貌を遂げました。JICAが1970年代からタンザニアで取り組んできた稲作支援の歩みが、日本の関係者や現地の人々の姿を通して生き生きと描かれています。

研究プロジェクト「アフリカの農業転換(アフリカ経済改革研究センターとの共同研究)」

アフリカの小規模農家の農業生産力は、アジアに比べると、わずか約3分の1とされます。低い生産性を向上させて農業セクターの変革を促すため、JICAはACET(African Center for Economic Transformation)との共同研究を実施し、アフリカ経済変革のための政策提言を行いました。

農家の収入向上

研究プロジェクト「SHEPアプローチの小規模農家への効果に関する実証研究(SHEP研究)」

SHEP(市場志向型農業振興:Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion)アプローチは、「作ってから売り先を探す」から「売れるものを作る」への意識改革をもたらす農業普及手法です。SHEPアプローチが小規模農家の生計向上に与えるインパクトを明らかにすることなどを目指し、本研究プロジェクトでは実証経済学的アプローチや社会学的アプローチなどを用いて検証しています。

ディスカッション・ペーパーNo.27「Analysis of the Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion (“SHEP”) Intervention on Income and Food Security in Ethiopia」

本ペーパーでは、エチオピアのオロミア地方における610件の農家を対象とした調査や分析の結果、SHEPは小規模園芸農家の収入と食料安全保障を向上させ、特に、SHEPアプローチで取り組んでいる男女共同での意思決定は世帯の食料安全保障に正のインパクトを与えると論じています。

農業を通じた経済成長

書籍『The Quality of Growth in Africa』

JICA緒方研究所は、国際的な研究ネットワークの拡充と発信力強化の一環として、ジョセフ・スティグリッツ教授が率いるコロンビア大学政策対話イニシアチブ(Initiative for Policy Dialogue:IPD)との共同研究を2008年から実施しています。その成果の一つである本書籍の第3部では、農業セクターの開発を含むアフリカの経済発展について論じています。

農業のレジリエンス強化

研究プロジェクト「不確実性下における気候変動適応対策の経済的評価に関する研究」

アフリカにおける農業では、気候変動などによるリスクに対応できるよう、レジリエンスの強化が求められています。同研究プロジェクトでは、不確実性を考慮した気候変動適応対策に関する評価手法を考察し、その評価手法をケニアでのムエア灌漑開発事業に応用して検証しています。

食料安全保障の向上

【天目石慎二郎上席研究員コラム第1~3回】アフリカの発展と食料安全保障

天目石慎二郎上席研究員が執筆したコラムでは、食料安全保障の向上や農業開発を通じたアフリカの健全な発展について、(1)今後の食料安全保障、(2)若年層の雇用創出、(3)ジェンダー平等と農村女性のエンパワーメントの3つの切り口から論じています。

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