「開発協力と青年育成のあいだ」:青年海外協力隊(JOCV)研究セミナーを神戸で開催

2014.12.25

2014年12月13日、第4回青年海外協力隊(JOCV)研究セミナー「開発協力と青年育成のあいだ」を神戸にあるJICA関西で開催しました。

JICA研究所では、政治学や文化人類学など様々な学問の観点から青年海外協力隊(JOCV)事業を分析する研究プロジェクト「青年海外協力隊(JOCV)の学際的研究」を実施しています。これまでに、協力隊の歴史(第1回)、人類学から見た協力隊(第2回)、海外ボランティア事業の国際比較(第3回)というテーマでセミナーを開催しました。第4回目となる今回は、協力隊の目的の多様性、特に開発協力と青年育成の関係性に焦点を当て、研究発表が行われました。

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会場の様子

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(左から)岡部主任研究員、
須田研究所助手、白鳥研究員

冒頭、畝(たんぼ)伊智朗所長が開会の挨拶した後、岡部恭宜JICA研究所主任研究員が、協力隊創設の歴史と発展について研究を発表しました。それによれば、1965年の創設には、冷戦下の対米関係や農村・都市部の青年問題が背景にあり、さらに青年団体の指導者や自民党の若手代議士からの強い働きかけと、それに対する外務省の反応が作用していました。そして、協力隊が途上国の開発支援、相互理解の深化、国際的視野の涵養(青年育成)という多様な目的を持つ事業として創設されたのは、外務省と自民党・青年団体との間の妥協の結果であったこと、しかし、この妥協のお陰で協力隊は、JICAの技術協力や外交戦略の枠内で組織的支援を得ることができ、また地方自治体や隊員OB会からの支援も獲得して、50年にわたり発展してきたのだと論じました。

続いて、白川千尋大阪大学大学院人間科学研究科准教授が「ボランティアとしての青年海外協力隊」について発表を行いました。多様な職種からなる協力隊事業の中で、高度な専門性が要請されない「コミュニティ開発(村落開発普及員)」の特徴について、自身の隊員としての経験を通して分析しました。その中で、村落開発普及員は高度な専門能力を持たないが故に、既成概念に束縛されず、住民と共に学び行動することで、住民の主体性を引き出した活動を構想・実施することが出来ることを示し、その特性は、JOCVから「ボランティアとしての視点を併せ持ったプロフェッショナル」として活躍する可能性を引き出すものであると説明しました。

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(左から)白川准教授、
橋口特定教授、三次審議役

最後に、JICA研究所の白鳥佐紀子研究員と須田一哉助手が協力隊員の類型化について発表しました。研究所では協力隊員に対する意識調査を2011年から継続して実施してきましたが、今回はその約1,500人のデータを用い、協力隊員の応募動機について主成分分析およびクラスター分析という手法に基づき統計分析を行いました。その結果、協力隊員の人物像は、「好奇心型」、「ビジネス志向型」、「国際協力志向型」、「自分探し型」、「自己変革志向型」、「慈善志向型」という6つに類型化できることが明らかになりました。そして、このような類型化については、グローバル人材としての隊員の活用や、隊員の募集、効果的な活動の設定など、実務の様々な面に対して示唆がありうることが指摘されました。

これらの発表に対し、討論者である橋口道代京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授は、グローバル人材育成、ボランティアとしての性格、技術援助としての専門性のバランスをいかにとるかが、協力隊事業の課題であるとコメントしました。また、三次啓都JICA青年海外協力隊事務局審議役は、セミナーのテーマである「開発協力と青年育成の関係」は伝統的な課題であること、協力隊事業は、海外の類似事業と比べて、その多様性が特徴として挙げられると述べました。その後行われた来場者との質疑応答では、青年育成の側面について質問が挙がるなど、活発なやりとりが行われました。

開催情報

開催日時:2014年12月13日(土)
開催場所:JICA関西

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