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海外ボランティア事業の国際比較: 米国と英国に関する研究セミナー開催

2014.07.09

6月23日、「海外ボランティア事業の国際比較—米英を中心に」と題した公開セミナーをJICA市ヶ谷で開催しました。JICA研究所では、2012年より研究プロジェクト「青年海外協力隊(JOCV)の学際的研究」を行っており、その一環として、研究成果の発信やネットワークを構築する目的でセミナーを開催しています。すでに第1回(歴史)を2013年9月に、第2回(人類学)を2014年3月にそれぞれ実施しており、今回で3回目となります。

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セミナー冒頭の様子

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河内職員

本セミナーでは、外国の海外ボランティア事業に焦点を当て、米国政府の平和部隊(Peace Corps)と英国のNPOが運営するVSO(Voluntary Service Overseas)を取り上げ、特に両組織の事業の目的、成果、歴史について考察するとともに、JOCV事業との比較を行いました。

最初に「政府系ボランティア組織のパイオニア—米国平和部隊半世紀の歩み」のテーマで、長崎大学多文化社会学部の戦略職員である河内久実子氏が発表を行いました。河内氏は、平和部隊は、ケネディ時代に大統領令によって1961年に創設され、2014年2月までに累計で約21万5千人以上の隊員を139国に派遣したことなど、その事業の歴史と概要を説明しました。その上で河内氏は、平和部隊は当初から「組織の独立性」と「非政治性」というスタンスを強調してきましたが、政府系ボランティアであるが故に、米国の国際関係や国内政治の状況に大きく影響されてきたことを、ラテンアメリカにおける隊員派遣中止の事例を基に指摘しました。

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松本部長

引き続き、「VSO研究—進化を続ける組織から学ぶこと」のテーマで、株式会社シーエスジェイ調査・企画部部長の松本節子氏からの発表がありました。VSOは、1958年に「世界のボランティアの父」と呼ばれるアレックス・ディクソンが中心となって英国で創設され、国に対してではなくその国のパートナー組織への支援によって貧困を削減することを目標に掲げていると説明しました。創設当初は、英国の優秀な高校卒業生を英語教師として新興国に派遣していたものの、その後ボランティアのプロフェッショナル化が進み、現在では国籍を問わず専門性の高いボランティアを最貧困国や地域に派遣していることを紹介しました。その上で、時代の要請や状況に応じて柔軟に対応、進化しているVSOの事例は、近年大学や民間と連携を進めているJOCVの改革にも多くの示唆を示すものであることを指摘しました。

発表後、コメンテーターとして登壇した大阪大学大学院人間科学研究科の澤村信英教授は、これまで途上国において出会ったボランティアのエピソードなども交えながら、米、英、日の国際ボランティア派遣組織の特徴と違いについて言及し、平和部隊が米国の政権交代によって影響を受けている面があることや、VSOは国際NGOであることから、途上国も含めて94の国籍の隊員が派遣されていることについて触れました。

会場からは、各組織が現在抱えている派遣国での安全管理、資金面での課題や、隊員の帰国後の就職状況、さらに派遣組織間のパートナーシップの可能性などについての質問が寄せられました。

最後に岡部恭宜主任研究員は、JOCVは組織としては平和部隊に近く、開発協力の取り組みや専門性の高さという点ではVSOに類似していることから、両機関の特徴や経験から学ぶことは多いと締めくくりました。

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澤村教授

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岡部主任研究員

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開催情報

開催日時:2014年6月23日(月)
開催場所:JICA 市ヶ谷ビル

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