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カンボジア自国通貨再導入39周年記念イベントで研究成果を発表—相場研究員

2019.04.08

2019年3月25日、カンボジアの首都プノンペン市内で、自国通貨リエル再導入39周年を記念したイベント(リエルデイ・イベント)がカンボジア中央銀行(National Bank of Cambodia:NBC)の主催で行われました。

満員となった会場の様子

カンボジアでは、ポル・ポト政権によって自国通貨が廃止された時期がありますが、同政権崩壊後の1980年3月20日にNBCによって再導入され、貨幣の流通が再び始まりました。再導入39周年を祝した本イベントは、いまだドルの利用が多く見られるカンボジアでの自国通貨の利用を啓発するためのものでもありました。

イベントにはゲストスピーカーとして、同国最大手の商業銀行ACLEDAのCEOのIn Channy氏、マイクロファイナンス金融機関AMKのCEOのKea Borann氏、同国最大の決済ネットワークを持つ特殊銀行WingのCEOのJojo Malolos氏、Web決済アプリを運営するSabay DigitalのCEOのSila Chy Thmor氏と共に、JICA研究所の相場大樹研究員が登壇しました。

JICA研究所は、NBCと共同で研究プロジェクト「カンボジアにおける自国通貨利用促進に関する実証研究」を行っています。本研究プロジェクトでは、カンボジア全土を対象にした金融機関・企業調査および家計調査により得られたデータをもとに、同国経済のドル化の背景を探り、自国通貨リエルの流通促進に向けた有効な施策を検討しています。今回のイベントで相場研究員は、これまでに行われた2回の調査結果とそれをもとにした政策提言について発表しました。

相場研究員は「調査結果を見るとリエルの使用が企業と家計ともに増えているが、銀行セクターでは依然としてドルを中心に預貸業務が行われている。特に、近年大きくなっている銀行業への海外からの資金流入がそのままドルとして国内に供給されており、リエル預金が急激に伸びているものの、国内全体のドル化の水準が低くなっていない」と報告。また、「自国通貨建で営業している企業が多く見られるが、その多くが適切な会計知識を持っていないことから、会計の知識を中心に中小企業の経営スキル向上を促すことも、リエル促進に有効である」と述べました。

発表する相場大樹研究員

イベントの最後にはパネルディスカッションが行われ、NBCのChea Serey氏がモデレーターを務めました。会場からの「なぜ高所得者ほどUSドルで借りるのか」という質問に、相場研究員は「所得が高い人ほど、ドルによる収入が多いことが主な理由。また、大きい金額を借りる時にリエルによる借り入れの選択肢がない場合があることも問題である」と返答しました。また、ACLEDAのChanny氏やAMKのBorann氏からは、今後銀行としてリエル普及に協力する旨のコメントがありました。また、WingのMalolos氏は、Wingの決済サービスの利用は少額の利用も多いため、リエルの使用が多く見られると述べました。

パネルディスカッションの様子(左端が相場研究員)

当日は、地元メディアも多く集まり、イベントの様子がいくつかのメディアで取り上げられました。特に、KHMER TIMESでは一面記事として取り上げられ、現地での注目度の高さがうかがわれました。

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