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国際開発学会第34回全国大会で峯研究所長と丸山主任研究員が発表

2024.01.08

2023年11月11、12日の2日間、国際開発学会第34回全国大会が上智大学四谷キャンパスにて、対面とオンラインで開催されました。「複合的危機下における連帯と共創」がテーマとして掲げられ、複合的危機下において、多様なアクターがいかに「連帯」し、共通課題に取り組むために新たな価値を「共創」できるのかについて議論が行われました。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)からは、峯陽一 研究所長と丸山隆央 主任研究員が参加しました。

プレナリーセッション「日本の開発援助はどこに向かうのか―開発協力大綱の改定を受けて―」(峯研究所長)

峯研究所長は、11日に開催されたプレナリーセッション「日本の開発援助はどこに向かうのか―開発協力大綱の改定を受けて―」で基調講演を行いました。

開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会の委員を務めた峯研究所長は、新大綱の特徴として、優先度の高いフレームとして「自由で開かれたインド太平洋(FOIP: Free and Open Indo-Pacific))が書き込まれたこと、法の支配や自由で開かれた国際秩序といった価値観が強調されていること、オファー型協力が導入されていること、さまざまなステークホルダーの多様性が強調されていること、開発途上国との対話と協働を通じた社会的な価値の「共創」の大切さが指摘されていること、開発協力の最上位の指導理念として人間の安全保障が強調されていることなどを指摘。峯研究所長は、「改定を繰り替えしつつ基本精神は現在まで生き続けているイギリスのマグナ・カルタのように、開発協力大綱が日本の国際協力の慣習法のような形で、これから進化していくことを願う」と述べました。

さらに峯研究所長は、「今回の大綱には、個人として特に大切にしたいこと、そして国際開発学会と共に取り組んでいきたいことが3つある」とし、第一に、さまざまなステークホルダーの役割を認めるにあたり、防災、平和の経験、環境保護、地場産業の振興、人口減少の克服など、国際協力に役立つさまざまな知見が蓄積されている日本の地方自治体や地方大学の国際協力への参加を促進すべきだと強調。第二に、国際協力の実践でも研究でも、支援の対象の人々と顔を合わせて協力するインターフェイスをもっと分厚くし、国際開発学会にも留学生や元留学生、途上国の研究者が参加すべきであり、それによって価値の共創に真剣に取り組みたいと述べました。第三に、大綱において国際公益の部分をキーワードとして体現している人間の安全保障の理念を深めていきたいとし、継続的に出版していくJICA緒方研究所レポート『今日の人間の安全保障』 についても紹介しました。

最後に峯研究所長は、「開発協力大綱には、国益に奉仕すべしというベクトルと、国際公益を重視すべしとするベクトルがあるが、両者を総合すべきではないか。国益を批判するというより、国際公益の実践を強めることで、全体の好循環を強めていきたい」との考えを示しました。

この基調講演を受けて、新大綱が開発協力の実務や将来の研究、人材育成にどのような影響を与えるのかなどについて、議論が交わされました。

ラウンドテーブル「テストと学力改善」(丸山主任研究員)

12日に開催されたラウンドテーブル「テストと学力改善」では、開発途上国において初等教育や前期中等教育での基礎学力の習得が大きな課題となっていることから、開発途上国における学力向上のためにテストをどのように活用することができるかについて発表・討論が行われました。

丸山主任研究員は、研究成果をまとめた論文「Developing Textbooks to Improve Math Learning in Primary Education: Empirical Evidence from El Salvador 」をもとに、「教科書開発プロジェクトの評価におけるランダム化比較試験(RCT)とテスト理論の活用」と題して発表を行いました。この研究は、エルサルバドルにおいて算数学習の改善のためにJICAの技術協力を受けて開発された教科書や学期末テストの配布を含む介入パッケージに関し、RCTを通じて学習成果への介入効果を推定したものです。

コメンテーターや会場からは、定量的調査と定性的調査との効果的な組み合せ方、教育評価にかかる相手国政府の人材育成の在り方、教育開発におけるテストの有効活用などについて質問が寄せられ、活発な議論が行われました。

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