人間の安全保障学会年次大会で峯研究所長らが人間の安全保障とエンパワメントについての新刊書籍を紹介
2024.03.08
2023年12月3日、神戸大学で開催された「2023年人間の安全保障学会(Japan Association for Human Security Studies : JAHSS)年次大会」の全体セッションにて、書籍『Human Security and Empowerment in Asia: Beyond the Pandemic
』の編者と寄稿者による研究発表が行われました。同書は、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の研究プロジェクト「東アジアにおける人間の安全保障とエンパワメントの実践
」の成果として、2023年10月にRoutledge から出版されたオープンアクセス書籍です。
「Reconceptualizing Human Security」という大会テーマに沿ったこのセッションでは、同書籍の内容を踏まえながら理論的観点と実践的観点の両方からエンパワメントの考え方を探り、人間の安全保障の概念に新たな視点をもたらすものとなりました。パネリストたちは、特に新型コロナウイルス感染症の大流行によって生じた課題に焦点を合わせ、さまざまな不安定な状態への対応においては、弱い立場にある人々の主体性を検証する重要性を改めて強調しました。
まず、同書の編者を務めたシンガポールの南洋理工大学S. ラジャラトナム国際関係大学院のメリー・カバレロ=アンソニー教授が、書籍の概要と、主な研究結果を紹介しました。同氏は、人々が相互に依存している状態であることからそれぞれの課題は関連し合っているとし、団結の必要性を強調しました。
南洋理工大学S. ラジャラトナム国際関係大学院のメリー・カバレ=アンソニー教授が書籍を紹介
次に、ケーススタディーを寄稿した 4 人が、貧困、食糧安全保障、ジェンダー、環境安全保障の各章について発表しました。慶応義塾大学のヴ・レ・タオ・チ専任講師は、新型コロナウイルス感染症の大流行に際してベトナム・ホーチミン市周辺の貧困地域が直面した経済不安について、また、オーストラリアのチャールズ・ダーウィン大学のジョナタン・A・ラッサ上級講師は、録画されたプレゼンテーション動画を通して、新型コロナウイルス感染症の大流行におけるインドネシアの国内避難民の食糧安全保障について発表しました。インドネシアの東南アジア地域研究センターのアリスマンセンター長は、同国のチタルム川沿いに住む人々が経験した新型コロナウイルス感染症と環境安全保障の課題の関係性を分析した章について発表しました。フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学のマ・ルルデス・ヴェネラシオン准教授は、新型コロナウイルス感染症の大流行時のフィリピンにおける、女性の水平的・垂直的なエンパワメントに関する調査研究について議論しました。
左から:ヴ・レ・タオ・チ専任講師(慶応義塾大学)、アリスマンセンター長(東南アジア地域研究センター)、マ・ルルデス・ヴェネラシオン准教授(アテネオ・デ・マニラ大学)、西川由紀子教授(同志社大学)
これらの発表の締めくくりとして、同書の編者の一人であるJICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の峯陽一 研究所長が、人間の安全保障の文脈でエンパワメントを分析する重要性について議論しました。人間の安全保障に関する議論は、人々の不安や保護の必要性を特定するだけで終わるべきではないと繰り返し述べ、ケーススタディーに示されているように、エンパワメントの向上において重要な力である人々の主体性を認識することも、同様に大切であると指摘しました。
人間の安全保障やエンパワメントに関する研究の大切さを語ったJICA緒方研究所の峯陽一研究所長
編者・著者の発表に続いて、参加者とのディスカッションが行われました。まずディスカッサントの同志社大学の西川由紀子教授が書籍に関する分析と意見を述べました。そしてエンパワメントに関する取り組みの長期的な影響と持続可能性、保護とエンパワメントの結びつきと両者のバランス、エンパワメントに関する別の解釈といった、示唆に富むさまざまな議論を編者、著者と行いました。さらに他の参加者からも、新型コロナウイルス感染症の大流行の下での人間の安全保障研究の難しさや意義、さらに人々のエンパワメント向上における文化の役割などについて質問が挙がり、「Reconceptualizing Human Security」という大会のテーマにふさわしい活発で刺激的な議論が行われました。
書籍『Human Security and Empowerment in Asia: Beyond the Pandemic』の編者と著者
この書籍は、以下の「関連する出版物」のリンクから入手できます。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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