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中満国際連合事務次長ご登壇!ナレッジフォーラム「いま国際協力に何が求められているのか-人々の命、暮らし、尊厳が守られる世界に向けて」開催

2025.09.12

第二次世界大戦が終結した80年前、国際連合(国連)は世界の平和と安全を維持することを目的に創立されました。しかし今日の世界は、武力紛争、気候変動、貿易戦争などの課題に直面し、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)の進捗の遅れも深刻です。2025年8月4日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表を迎え、ナレッジフォーラム「いま国際協力に何が求められているのか-人々の命、暮らし、尊厳が守られる世界に向けて 」を開催しました。

今こそ軍拡から人間の安全保障への転換を

中満事務次長は、「人々の命、暮らし、尊厳が守られる世界に向けた国際協力」と題した基調講演を行い、相互に関連し合う3つのテーマを取り上げました。

写真:基調講演を行った中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表

基調講演を行った中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表

第一に、国際情勢と国連が直面する課題に触れ、現在がかつてないほどの変革の時代であり、国際秩序がきしみ、構造的な不平等や格差が国内外で拡大していることや、最も脆弱な人々がさらに危機に直面する負の連鎖が起こっていることに言及。世界の軍事支出は過去最高を記録し、経済競争も不均衡を悪化させていると指摘し、「国境を越えた課題の解決には国と国の協力が不可欠だが、短期的な国益が優先され、国際協力が後回しにされる悪循環に陥りつつある。軌道修正が必要」と述べました。

第二に、軍事化がもたらす代償については、各国が防衛予算に資源を投下する一方で、人道分野や福祉分野への投資が減少し、平和的な外交、交渉、協調といった手段による解決ではなく武力の備えで脅威に対応しようとしている世界共通の傾向を説明。「真の安全保障は兵器で築けるものではない。軍事予算が減れば、その分を開発にまわせるという大きな循環を理解することが必要」と述べました。

第三に、模索すべき今後の国際協力の道筋については、多国間主義へのコミットメントの重要性を広め、国連の仕組みを根本的に“リセット”して改革していくこと、市民を守り、世界の安全保障を支える軍縮の枠組みを強化すること、安全保障の概念そのものを見直すことを挙げました。

中満事務次長は、「対立と軍拡を基盤とした安全保障の概念から、外交や国際協力、人間の安全保障の概念への根本的な転換が求められている。私たちが今日選ぶ道が、今後数十年の世界をつくっていく、という岐路に立たされている」と強調しました。

国際社会の分断の構造を変えるために日本のリーダーシップに期待

続いて、JICA緒方研究所の亀井温子 副所長がモデレーターを務め、中満事務次長、NPO法人アクセプト・インターナショナルの永井陽右 代表理事、JICAの宮崎桂 副理事長によるディスカッションが行われ、国際協力に若者や市民を巻き込むためのアプローチや日本に期待する役割などについて議論しました。

写真:日本の役割や若者へのメッセージまで、多様なテーマで議論

日本の役割や若者へのメッセージまで、多様なテーマで議論

写真:モデレーターを務めたJICA緒方研究所の亀井温子副所長

モデレーターを務めたJICA緒方研究所の亀井温子副所長

ソマリアなどで非政府武装勢力の若者の社会復帰支援に取り組む永井代表理事は、日本の国際協力を国益とつなげ、その意義を人々に伝えて巻き込んでいく重要性を強調。また、「フラストレーションや恐怖心にあおられて短期的に自国や自分のことだけを考えるのではなく、長期的な大きなビジョンを持つことが必要」と述べました。若者の参画は鍵であるとし、若者の役割を最大化することで問題解決につなげる新しいアプローチへの期待を語りました。

「海外協力隊60周年という節目の年に国際協力をどう再認識するか?」と始めたJICAの宮崎副理事長は、日本の国際協力が相手国を主体に考え、長く寄り添い、人々のエンパワメントを大事にする“人”に焦点を当ててきた特色を挙げ、「それは正しかったと思うが、正しいからいい、だけではなく、短期的に見える成果も人々に伝え、国際協力への理解を得ることが必要ではないか」と投げかけました。また、日本の人々に海外で起きていることを“自分ごと”として実感してもらう重要性も指摘しました。

写真:NPO法人アクセプト・インターナショナルの永井陽右代表理事

NPO法人アクセプト・インターナショナルの永井陽右代表理事

写真:JICAの宮崎桂副理事長

JICAの宮崎桂副理事長

中満事務次長は、国連で実施している若者のスキルアップに向けた研修なども紹介し、市民や若者をもっと巻き込んで課題を解決していくためには、“ジグソーパズル”のようにさまざまな手法を組み合わせていく必要性を強調。そして「日本が戦後80年、平和国家として歩んできた歴史を日本人は誇りに思うべき。国連の場で見ていると、日本は信頼がおける加盟国だと思われている。その信頼を守りながら、開発と安全保障の両方をまたぐ人間の安全保障を掲げ、世界の分断の構造を克服する役割を果たしてほしい」と期待を寄せました。

このフォーラムの登壇者などの情報は以下からご覧になれます。

また、このフォーラムの動画は以下からご覧になれます。

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動画:中満 国際連合事務次長ご登壇!JICA緒方研究所ナレッジフォーラム いま国際協力に何が求められているのか-人々の命、暮らし、尊厳が守られる世界に向けて

中満 国際連合事務次長ご登壇!JICA緒方研究所ナレッジフォーラム いま国際協力に何が求められているのか-人々の命、暮らし、尊厳が守られる世界に向けて

人間の安全保障に関するJICA緒方研究所の取り組みについては、以下のリンクからご覧いただけます。

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