非感染性疾患への対応で日本が果たす役割とは?瀧澤主席研究員が国連総会イベントで講演
2025.12.19
2025年9月24日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の瀧澤郁雄 主席研究員が、米国ニューヨークでの第80回国連総会のサイドイベント「Japan’s Innovation and Multi-Stakeholder Partnerships for Tackling NCDs: Advancing the Pathway to UHC」に参加しました。同イベントは日本製薬工業協会の主催、国連日本政府代表部の共催、国際製薬団体連合会の後援によるもので、日本の厚生労働省の江副聡国際保健福祉交渉官が開会あいさつを、日本製薬工業協会の眞鍋淳副会長が閉会あいさつを行いました。
基調講演を行った瀧澤主席研究員は、日本がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ (Universal Health Coverage: UHC)と幅広いキャパシティ・ディベロップメントの取り組みを通じ、非感染性疾患(noncommunicable diseases: NCD)に由来する世界的な課題への対応に貢献していることを紹介。その中で、NCDの課題に対処してきた日本の経験は、グローバルヘルスの政策と実践に価値ある知見をもたらすと強調しました。
非感染性疾患による世界的課題について論じるJICA緒方研究所の瀧澤郁雄主席研究員(中央)
瀧澤主席研究員は最近の大規模な国際比較研究の結果から、主な非感染性疾患(がん、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病)による30〜70歳の早期死亡リスクは日本が185ヵ国中で最も低いことを挙げ、この分野での日本の成果を説明しました。また、新型コロナウイルス感染症に関する研究結果では、日本はパンデミック中の超過死亡の増加が人口上位30ヵ国で最小だったと指摘。さらに、こうした一連の成果は、UHCに基づく日本の医療体制の有効性とレジリエンスを表すだけでなく、日本の人々の生活習慣や健康行動、さらには日本の社会、経済、文化などの環境という要因も反映していると解説しました。瀧澤主席研究員は、UHCとパンデミック予防・準備・対応(pandemic prevention, preparedness and responses: PPR)の両方を促進する日本の取り組みには十分な根拠があると強調しました。この方針は2022年の「グローバルヘルス戦略」で明示され、2023年の「G7広島首脳コミュニケ」で再確認されたもので、UHCとPPRのつながりを理由としています。
その上で、瀧澤主席研究員はJICAがUHCビジョン、プラネタリーヘルスビジョン、人間の安全保障ビジョンという3つに基づき、NCD対策に取り組んでいることを説明しました。UHCビジョンに基づく事業の例として、中核拠点アプローチ(ボリビア)、プライマリーヘルスケアアプローチ(ニカラグア、ホンジュラス、ドミニカ共和国)、医療システムアプローチ(カンボジア)、エンゲージメントアプローチ(フィジー)を挙げました。これらの取り組みは、国際ドナーと地域パートナーとの協力のもと、継続的にインパクトを生み出すために相手国のキャパシティ・ディベロップメントに取り組んでいるのが特徴です。
瀧澤主席研究員は、NCD対策を有効なものにするには、医療体制の強化を超えた包括的かつ統合的なアプローチが求められると強調し、UHCに加え、プラネタリーヘルスと人間の安全保障のビジョンを取り入れる重要性も指摘しました。また、人間の健康と地球生態系の健康の相互依存関係に焦点を当てた概念であるプラネタリーヘルスの典型として、肥満、栄養不足、気候変動の「グローバル・シンデミック(世界的・複合的蔓延)」を挙げ、JICAは食育 の理念に基づいて対策に取り組んでいると説明。その具体例として、モンゴル、マレーシア、インドネシアでの学校給食支援を紹介しました。さらに、JICAが人間の安全保障の原則に沿って世界的なNCD課題に取り組んでおり、人びと中心の視点で、「保護」の提供や国際的な「連帯」の推進と共に、当事者が主体的に行動できるようエンパワメントを進めていることを改めて強調しました。
瀧澤主席研究員は、日本がキャパシティ・ディベロップメントやさまざまなステークホルダーとの連携を通じて理念を行動に移し、グローバルヘルスにおいて先見的かつ実際的なリーダーシップを発揮することの重要性を強調し、基調講演を締めくくりました。
他の発表者と瀧澤主席研究員(左から3人目)
同イベントについての記事は、日本製薬工業協会のウェブサイトにも掲載されています。
また、JICA緒方研究所の非感染性疾患に関する研究プロジェクトや人間の安全保障の取り組みについては、以下の関連リンクからご覧ください。
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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